室内自転車乗りのライドログ

室内でZwiftばかりしているインドアライダーのメモ。実走は春と秋だけ、年に数回。

北海道ロングライド:長万部から積丹半島とオロロンラインを北上して稚内を目指す旅

はじめに

先日、北海道の利尻島に行きまして。稚内からのフェリーじゃなくて、札幌の丘珠空港から小さいプロペラ機に乗って。座席は右側で、ああこれは利尻山が見えないほうだなあ失敗したかなあ、などと思いつつ右手の窓の下を見ていると、石狩川河口から北に海岸が伸びて、海岸に長い一本の道路が走っていて、町や集落を抜けていき、そのうち風車がたくさん立った真っ直ぐな道路になって、そのあたりで飛行機は利尻島に向けて西に進路を変えて海岸から離れていきました。で、ああ、あそこに絶対に自転車で行かなきゃならないな、という謎のスイッチが入ってしまったので、実際に行ってきました。という2024年初夏、六月末の北海道ライドのメモです。長いです。

上空から見るオトンルイ風車群北端部

計画ルート

  • 初日:長万部→神恵内 100km (東京から長万部まで鉄道輪行)
  • 二日目:神恵内→小樽→厚田 160km
  • 三日目:厚田→留萌→初山別 160km
  • 四日目:初山別→稚内→猿払 165km
  • 五日目:猿払→名寄 150km
  • 六日目:名寄→旭川 90km (旭川空港から飛行機輪行)

長いな...

旅の考え方

  • 行きは東京から新幹線の鉄道輪行で北海道入り。飛行機輪行の経験がないので不確定要素を減らすため。帰路は戻ってこられればなんでもいいので、飛行機輪行チャレンジとする。行きも戻りも鉄道輪行はさすがにちょっとキビシイ
  • 安全のため走行は日中のみ。午前7時スタート午後5時ゴールの10時間走行を標準モデルとし、多少の観光を含めたグロス平均速度を16km/hと置いて、一日の走行時間は160km程度まででプランニングする
  • 一週間程度の旅になり、後半の天候が読み切れないので、宿泊場所はある程度柔軟に変えられるように組む。出発時点でひとまず三泊目までを予約しておき、その先は天気と風向きの予報を見つつ、進めそうな距離を見積もって都度確保していく方式とする。終日追い風と向かい風では進める距離が全然違ってくるので(可能性のありそうな宿をひととおり確保しておいて、進行に合わせてキャンセル料金発生前にキャンセルしていく選択肢もあるにはあるが、個人的に好かないのでやらない)
  • 荷物はサドルバッグに入る範囲で、できるだけ少なく絞る。ウェアの替えも持たず、宿屋に着いたら洗って干して翌日も着ていくスタイルとする

事前準備

  • ルートを引いてGarminに突っ込む。一番時間がかかるのがここだが非常に大事なところなので労を惜しまない
  • 自転車の整備、空気入れとライトの動作確認
  • ウェアや装備品のチェック → サドルバッグに収納
  • 輪行グッズのチェック
  • 新幹線、特急北斗、戻りの飛行機の切符手配
  • ひとまず三泊目までの宿の確保

さて、では出発。

Day 1:東京→長万部→神恵内

朝イチの函館行き新幹線に乗るため、6時前の埼京線に乗って池袋駅を出発。最後尾車両の輪行定番ポジションを確保して大宮に向かう。下り電車には夜勤明けと思しき皆さんがそれなりに乗車している。大宮駅は出勤するサラリーマンズで既にごった返している。バイクを慎重に抱えながら新幹線に乗り換え、朝食のオニギリやら何やらをコンビニで買い、新函館北斗行きのはやぶさ1号に無事乗車して車両最後部の荷物スペースにバイクを置いて、席に座って一旦小休止。ほぼ満席で驚く。

朝イチから結構な混雑の大宮駅下りホーム

新函館北斗までは4時間程度かかるが、私には多少の鉄属性も備わっているので全く退屈なことはない。朝食を摂りつつ、車窓をスッ飛んでいく初夏の田園風景を楽しむ。新青森駅を出ると管轄がJR北海道に移り、観光バスを思わせる青函トンネル説明セリフが車内に流れ始めて、旅気分がさらに盛り上がってくる。その昔にカシオペアで抜けた時は随分長いトンネルだなあと思った記憶があるが、流石に新幹線はサクっとトンネルを抜けて、景色を楽しむ暇もそれほどなく早々に新函館北斗に到着する。狭い在来線のホームは、北海道旅を楽しむ比較的ご高齢のツーリストとインバウンドの皆さんでごった返している。乗り換えた特急北斗もしっかり満席。この車両は最後部の座席裏スペースが狭く、バイクを入れるとリクライニングが多少制限されることが判明。隣座席の乗客に詫びを入れつつ置かせてもらう。噴火湾を右手に、さらに一時間少々揺られると、降車駅の長万部に到着である。合計の移動時間は6時間半程度。

ここから自転車に乗ってスタート

長万部からライド開始

午後一時前の長万部駅には多少の旅行者と数台のタクシーがいるが静かなもので、ザ・地方の駅前という風情。いずれここにも北海道新幹線の駅ができて高架の駅舎に立て替えられるそうだが、全くイメージが湧かない。一つ困ったことに、長万部駅には自販機はあるがゴミ箱がなく、社内で食べたカロリーメイトの箱やペットボトルを捨てる場所がない。クマ対策なのだろうか。普通のツーリストだったら書かれた通り持ち帰ればいいのだけど、荷物をギリギリまで絞ったサイクリストとしては若干困惑する。仕方ないのでペットボトルは踏んで潰してサドルバッグの紐に引っ掛ける。あまりのんびりしている時間はないので、粛々とバイクを組み立て、輪行袋を畳んで、ガーミン様のナビゲーションをオンにしたら出発。初見の土地でのロングライドはガーミンのナビがないと走れたものではない。サイクリストの生命線である。

長万部駅のロータリーを出たら左手に進んで線路を越え、すぐに森の中に入っていく。涼しいとまではいかないが、東京よりはずっと爽やかな風が吹く。爽やかだが少々風速が強く、若干前輪が取られる感があるので慎重に漕ぎだしていく。そう、あれだけ入念に装備を考えてきたはずなのに、ホイールについては全く考慮が抜けていて、50mmハイトのままで来てしまったのである。このディープリムホイールがこれから北の大地で(マイナスな方向に)エアロ効果を遺憾なく発揮していくのだが、この時点では本人はそれを分かっていない。何にしても、もう進むしかないのだが。

森の中を抜ける薄曇りの道道を積丹に向かう

長万部から日本海に向かう道道9号線はまずまず幅広で比較的走りやすいが、砂利を積んだダンプ等の大型車がバンバン通ることもあり、最初からステキな旅気分でロマンティックなスタートという展開にはならない。多少のアップダウンをこなしながら森の中を一時間少々走り、歌棄(うたすて)という集落を過ぎたところで道が日本海沿いに出る。ご存じのとおり北海道は独特な地名が多く、集落やら橋やらの名前が書かれた看板が路肩に登場するたびに「読めるかい」というツッコミを入れながら走るという楽しみが味わえる。

良い感じにフラットな海沿いルート。しかしトンネル祭りは近い

海沿いの道は交通量が格段に少なく、フラットで、湾を隔てた向こう岸には風力発電の風車が回り、海の透明度も高い。ニシン小屋的なちょっとした観光ポイントも現れる。色褪せた木造の家屋や倉庫が北の大地感を演出し、進行方向には積丹半島の山並みが見える。奥行きのある眺望にようやく旅気分が盛り上がってくるが、しかし平和は長くは続かない。早くも北海道西海岸名物のトンネル祭り(第一部)が始まる。トンネルを出たと思ったらまた次のトンネルが続き、利根川や荒川の土手に慣れきった甘ちゃんサイクリストに試練を与えてくる。この、想像をはるかに超えるトンネル群の驚異と脅威については、またしばらく後でまとめたい。

積丹に来れば一生分のトンネルを味わえます

積丹半島へ

最初のトンネルゾーンをなんとかクリアすると岩内の町に差し掛かる。交通量が増え、地域の中心らしい雰囲気が漂う。この先にはコンビニがしばらくないので、ローソンに寄ってトイレを借りて補給を取って再出発。すぐ先の泊には原子力発電所があり、立ち入り禁止の物々しいゲートや、原子力PRセンターとまりん館などのハコモノが登場し独特の雰囲気がある。泊を過ぎたら、いよいよ積丹半島の始まり。海と山の間を縫うように曲がりながら国道229号線を走り抜けていく。

これは道路というか橋ですね

基本的に海岸沿いはガケばかりで、平地がない。良くこんなところに道を通したもんである。立体感のある独特のダイナミックな景観が連発し、写真撮影が好きなサイクリストは中々先に進めないだろう。そしてとにかくトンネルが多い。体感上の比率は景観30%でトンネル70%くらい(誇張しています)。しかし、この地形に道が作られていて、自転車で通れること自体に感謝すべきなのだろう。

このようなところに道を通していただきましてありがとうございます

そんなこんなで日没も迫り、あまり写真撮影で止まってばかりもいられないので多少ペースを上げて走る。無事予定時刻の30分前に神恵内の町に到着し、せっかくなので自転車で集落内の雰囲気を見て回る。

神恵内で唯一の補給地点、岡田商店

と言っても集落は狭いので10分もかからず観光は終了し、予約していた民宿に早々にチェックイン。バイクは玄関に置かせてもらい、宿側のタイムテーブルに沿ってまずは晩御飯をいただく。海鮮尽くしである。カルパッチョ、刺身、煮物、焼き物、揚げ物。北海道産の白米と味噌汁。あとトウモロコシ。むほほ、めっちゃうまい。自転車旅はゴリゴリとエネルギーを消費してしっかり腹が減るので、地方の美味しいごはんとの相性は抜群。満腹になったら、ウニが不漁な話とか、国道沿いにたくさんある駐車スペースにまつわるエトセトラなどのよもやま話をしばし楽しむ。

文字通りのメシウマ

食事の後は風呂に入ってウェアをコインラインドリーに突っ込んで乾燥室に干して、バイクをチェックして、スマホやナビを充電して、早々にお休みなさい。長い旅なのでしっかり睡眠を取っていく。

走行距離:93km
走行時間:3時間40分(グロス4時間30分)

 

Day 2:神恵内→小樽→厚田

この日の走行予定は、神恵内から日本海沿いに厚田まで。160kmちょっと。

おっちゃん美味しいご飯をありがとう

宿の朝食が7時からなので6時に起床。前日のライドは100km未満だったし、緩めに走って心拍数も抑えたせいか、疲れも筋肉痛もナシ。若干心配していたおケツも全く問題なし。うむ良きかな。乾燥室ですっきり乾いたウェア一式に着替え、サドルバッグに荷物をまとめ、朝食を食べてライドスタート。何だかんだで8時近くになってしまう。ロングライドで無理にペースを上げずに距離を稼ぐには何といっても早朝に出発するのが効果的なのだが、そのためには宿の朝食を諦めねばならない。今回はメシを取った。実際とても美味かったので悔いはなし。

トンネル以外は本当に景観続き

神恵内から反時計回りに積丹半島を北上していく朝8時の国道229号線は、ちょっと強めの風が吹いているが涼しく上天気で、車もほとんど走っておらず、左手にはキレイな海が広がる。非常に快適な滑り出しである。フフフ、この風、この肌触りこそロングライドよ!しかし15分もしないうちに最初のトンネルに差し掛かると、そこからは再びトンネル祭り。トンネルの合間に短い海の眺めをチラリと楽しむ、という展開が続く。マップを見て理解していたつもりだったが、実際に走ると驚き呆れるレベルでトンネルが多く、そしてそれぞれが長い。単体2,000mオーバーは全く珍しくない。積丹外周ライドを楽しめるかどうかは、ひとえにライダーのトンネル適正にかかっていると言ってもいいだろう。

積丹半島でのトンネル走行とは

積丹を走ることで、意図せず膨大なトンネル経験値を獲得してしまったので、ここで一度このエリアでのトンネル走行経験についてまとめておきたい。

典型的な積丹のトンネル。路肩は狭いが交通量が少ないのが救い

歩道と車道のどっちを走るか

安全性と心の平穏を考えると、トンネル内では歩道を走りたいところ。しかし積丹半島(特に神威岬から西側)のトンネルでは、エッジの鋭い大き目の砂利が散らばっていたり、濡れた砂に覆われていたりなど、ちょっとこれは走れないなという歩道が多い。段差の上にある歩道部分は日々の整備が追い付かないのだろう。さらに歩道が右にあったり左にあったり、柵があったりなかったり、幅が広かったり狭かったりと仕様に一貫性がなく、トンネルごとに状況が違っていて初見のツーリストには使いづらい。一方で(時間帯によるが)本州の似たようなトンネルと比べると交通量はかなり少なく、また車道部分の路面は比較的整っていて、危険な段差や陥没は少ない。

従ってトータルバランスで考えると、車道走行でそのままトンネルに突入し、大型車が少ないことを祈りつつ黙々と高速巡行して抜けるのが最適解だろうと思われる。小樽に近づくとまた状況が変わってくるのだが、それは後ほど。

このトンネルの歩道は濡れた砂に覆われていて進めなかった

トンネル用の装備

照度の高いフロントライトは必須装備。入口出口の近くでは比較的照明はしっかりしているが、特に長大トンネルの中間部分では照明が暗いゾーンが続き、明るいフロントライトがないと路面が見えなくなる。また、トンネル内であっても対向する車がこちらの車線にハミ出して追い越しをかけるので、自分の存在をアピールする意味でも強めのフロントライトをしっかり点灯させたい。私は点灯用にOlight RM1500と点滅用にCateye Volt400の2本立てとした。

リアライトの重要性は言うまでもない。少なくとも2発装備し、こちらも点灯+点滅で遠くからの視認性を極力高めたい。スピードを出している車が多く、高速で接近するので、これだとドライバーに迷惑かな?と思うほどの明るいリアライトをお勧めしたい。反射材を備えたウェアも積極的に選択したい。

アイウェアについては、当然ながら色の濃いものは全くお勧めできない、というか無理。素早く変化する調光レンズを使うか、あるいは最初から透明に近いアイウェアで臨むのが良いだろう。

大型車からの風をいかにさばくか

トンネル内の大きなチャレンジのひとつが、高速で飛ばす大型車が生む突風。本州と比べると北海道の大型車は(普通車もだが)全体的に巡行スピードが速い。特にトンネル内では、100km/h以上余裕で出てますよねくらいの勢いでブッ飛んでいくダンプや大型トラックは珍しくない。狭いトンネル内でこのような大型車に高速で追い越されると、まず風圧で左の路肩側にプッシュされ、その数瞬後に減圧で右に引き戻される。なので、追い越される際にはギリギリまで路肩に寄るのは避けて、多少のスペースを左側に残し、追い越される瞬間には少々車道側に重心を傾けるくらいの心づもりで走り、追い越されたら路肩側にバイクを倒し気味にするという、安全を求める本能とは逆の操作が必要になってくる。北海道の業務カーは高い確率で大きく避けてくれるので、大抵の追い越しではそこまで煽られることはないのだが、とは言ってもたまにスレスレで追い越されることもある。追い越されるその瞬間までこちらからは車間が分からないので、毎度ワーストケースを想定して走る必要があり、気が抜けない。追い越されるまでには、唸りを上げるエンジン音とタイヤの走行音が遠くから反響しつつ迫ってくるというステキな演出が添えられる。トンネル内ではかなり遠くから走行音が響くので、あー来てるなー、これはデカいやつだな、そろそろかな、と思ってからが実際に追い越されるまでがとても長い。慣れないと、前と後ろのどっちから来てるのかすら分かりづらい。私は半日くらい走ったらある程度慣れた(諦めた)が、それでも平然と走るいうことにはならなかったし、閉所や騒音が苦手な人にとってはトラウマ経験確定だろう。繊細な人には全くお勧めできない。

また風圧に関しては、追い越しだけでなく対向車線の大型車にも注意が必要。トンネル内で高速走行する大型車とすれ違うと、ワンテンポ遅れて対向車線から風圧がブッ飛んできてハンドルを取られる。完全にハンドルのグリップを緩めていると危ないので気を付けたい。この観点でも、やっぱりディープリムはお勧めできない。

ちなみに某民宿のおっちゃん情報によると、ランドナースタイルで大きなサイドバッグを装備した自転車が大型車の風で左にプッシュされて側壁にコスりつけられる事案が多発しているそうです。そりゃそうなるよなあ。

トンネルの良いところ

基本的にトンネルはサイクリストの鬼門であり、ネガティブな指摘ばかりになったが、彼らの名誉のためにいくつか好ましい点も挙げておきたい。

  • 涼しい。陽射しが強い日は特にヒンヤリ感がありがたい
  • 風が弱い。場合によって向かい風や追い風が吹くことはあるが、トンネル外と比べると格段に風速が弱まり、風向も一定になり横風が吹かないので(その意味では)走りやすい
  • 高速巡行できる。路面が安定しておりカーブや横道もなく真っ直ぐ走るだけなので。楽しいかどうかはまた別の問題だが...

総じてトンネルの快適性は交通量次第。早朝の積丹だと本当に全然車が来ないこともあり、後ろからエンジン音が聞こえないときに車道の真ん中を飛ばすのはなかなか悪くない。そのような素敵な時間帯は、この旅ではごく僅かだったが...

横風と戦いつつ小樽を目指す

積丹半島と言えば積丹ブルーと呼ばれる青い海が連想される。しかし半島外周部の国道229号線はほぼ海抜ゼロメートルのフラットな道なので、淡々と走っているだけだと海を上から見下ろせる場所はほとんどなく、そこまでブルーブルーしている絵には出会えない。国道から見る海も十分綺麗ではあるのだが。

気づけばビューポイントとして名高い神威岬に差し掛かり、せっかくここまで来たんだし寄っていくのもいいかと思い、左に折れて岬に続く結構な急坂を上っていく。しかし頂上に近付くにつれて、どんどんと風が強くなり驚く。岬の上と下でこんなに違うのか。いつ何時落車してもおかしくないレベルでとても走れず、神威岬の駐車場が向こうに見えたところで撤退を決断。多分瞬間風速で20m/sくらい出ていたと思う。ここに至って、ようやく真面目にディープリムホイールが失策であったことを理解する。

爆風の神威岬。駐車場が向こうに見えたところで進むのを諦めた

積丹ブルーを諦めておそるおそる岬を下り、国道に戻って再び時計回りに積丹半島の外周を小樽方面に向かって走る。トンネルと海岸の絶景の繰り返しは変わらず。野塚の集落で国道229号線を外れて道道913号線に入り、半島外周部に沿って走り、北海道感が強い味のある小さな集落を抜けていく。国道を外れると交通量はさらに減って人気もなく閑散とした雰囲気が強くなるが、ウニ海鮮丼を供する食事処がいくつか点在していて、これらの店の前に差し掛かると急に大量のノボリと路駐の車と観光客の行列が現れるのが面白い。皆さん本当にウニがお好きですね。道道913号線の後半は森の中を抜けるアップダウンルートで、特にエキサイティングな要素はない。わざわざこちらを迂回する意味はあんまりなさそう。ルートはじきに再び国道219号線に合流して海岸沿いに戻り、美国や古平といった町を抜けていく。美国のセイコーマートでトイレ&軽食休憩を取る。このあたりにはコンビニにもゴミ箱がないので要注意。私の場合は、ここで買って食べたものなので、ということで店で捨てていただいて事なきを得た。

古平町の国道の曲がり角で目を引く中央旅館

古平町はこの周辺では最も大きな集落というか町で、ここを過ぎると明らかに交通量が増える。しかし積丹名物トンネル祭りはまだ終わらない。つまりここから先は「交通量が多い長大トンネルを連続して抜けていく」ことになる。比較的快適に車道を走れていた積丹前半とは違って、古平から小樽エリアのトンネルにおいては歩道走行一択である。小樽に近づくにつれて交通量が増えていき、特に余市と小樽の間では上下車線ともに普通に混んでいて、これまでのように対向車線を使って大きく避けてもらえなくなる。大型車比率も格段に上がるので、時間帯によるのかもしれないが、個人的にはここでのトンネル内車道走行はあり得ない。幸い歩道の幅はまずまず広くとられており路面もそれほどは悪くない。しかしゴミがかなり捨てられているので要注意。特に中身の入ったペットボトルが結構な頻度で転がっていて、踏むと非常に危ないので路面をよく見て走りたい。

ということで積丹とは違うかたちでトンネルと格闘しつつ、国道5号線に入って余市市街を抜けて小樽を目指す。余市には何かの醸造所があるらしく観光地の雰囲気が漂うが、バイクを止めて寄るほどの時間も興味もないので横目に眺めつつ通過。小樽エリアに入ると急に観光客が増えて雰囲気が変わる。アジアからと思しきインバウンドの皆さんの集団が目立つ。昼食の時間帯なので、小樽港湾センターという地元の皆さんしかいなさそうな社員食堂風のレストランでうどんを食べて、早々に小樽を離脱。

地元感しかない食堂

小樽から先はダンプトラック多めの国道5号線を淡々と進み、途中で北に逸れて銭函駅前を抜けて、札幌市郊外の住宅エリア外端部の道を北東に向かう。途中でナイスな雰囲気のソフトクリーム店に出くわし入店する。この判断は正解だった。

ロングライド中のうまいソフトクリームは絶対正義

コストコ石狩倉庫店のあたりで国道231号線に合流し、ストレートなネーミングの石狩川河口橋を渡ると、ついにオロロンラインの始まりとなる。いよいよである。しかし対向一車線の国道の路肩は狭く、相変わらず普通に大型車がガンガン通るため、やはりここでも旅情あふれるロマンティックなスタートという雰囲気ではない。徐々に市街地が農地に入れ替わっていく中を、引き続き黙々と漕ぐ。

このあたりで前方に怪しい雲が湧き始める。うーん嫌な予感がするなあ、と思っていたら、やっぱり雨が降り始めた。雨雲レーダーによるとこの周辺部分だけ降っている。これは想定外。とはいえ前に進むしか選択肢はない。この日の宿まではあと20km程度。GR3(デジカメ)だけは濡らしたくないのでビニール袋に二重に包んでサドルバッグに突っ込み、危なくない程度にペースを上げて北上する。徐々に景色がオロロンっぽくなってきて、丘に挟まれた下り坂の向こうに海が見えるなどするが、暗いわ雨は降ってるわで、あまり感慨に浸るシチュエーションではない。写真も撮らずとにかく宿へ急ぐ。幸い雨はそれ以上強くはならず、ズブ濡れになる前に目的地である厚田の民宿に辿り着けた。バイクは宿のガレージに置かせてもらう。すぐに風呂に入らせてもらい、ウェアを洗濯して干して、美味しい夕食にありつく。この民宿は普通に食事処としても営業していて、厚田港で上がった新鮮な魚介をたっぷり出してくれる。刺身、煮物、焼き物、天婦羅。最後の夕張メロンまで完璧な流れに大満足。

ここから煮物焼き物天婦羅デザートと続いていくフルコース

部屋に戻ったら、二日後の天気予報をチェックして宿泊場所の検討をする。午後にかけて南南西の風が強まり、翌日も続くらしい。つまり稚内を回ると向かい風になるということ。計画では猿払まで行くつもりでいたが、風向きと風速のリスクを考えて、手前の稚内エリアに宿を取ることにした。風が弱まれば、プラン通りに稚内から旭川方面に自走するし、ダメなら鉄道輪行で逃げるという二択を想定。予めピックアップしていた候補の中から南稚内駅近くのホテルを予約して、就寝。

本日の走行距離:165km
走行時間:7時間10分 (グロス8時間30分)

 

Day 3:厚田→留萌→初山別

6時に起床。昨晩の雨はすっかり上がり、快晴の空が広がる。バイクをチェックし、チェーンを拭いてオイルを挿してタイヤのエアを確認。宿の朝食をしっかり食べて7:30に出発。集落内を一回り見て回ってから、国道231号線を北上していく。昨日終盤のペースアップのダメージが若干心配だったが、体調には全く問題なし。風も弱く、早朝なので交通量も少ない。キレイな海沿いの道を快調にスタートしていく。だがしかし本日も平和は長く続かない。

トンネル祭り第二部の開幕

いろんなパターンのトンネルに出会えます

厚田から増毛までのルートは「試される北の大地トンネル祭り第二部」となる。正直萎えるが、行くしかない。さて、このエリアはトンネルだらけという点では積丹と同じだが、地域が違うので特徴も少々異なってくる。具体的には

  • 交通量は多くないが、大型車比率はそこそこ高い(積丹より高い)
  • ほとんどのトンネルで歩道は狭い。車道を行くしかない
  • 照明が暗い箇所が多い。強力なフロントライトが欲しい
  • 水が出て路面がフルウェットな箇所がある
  • トンネル内でアップダウンがある。ヒルクライム中のトンネルも登場する
  • 浜益トンネルという単体4km超えのラスボスが現れる
  • ツーリングのバイカー集団がそこそこ多い。トンネル内でバイクの編隊が来るたびに、全方位から爆音に包まれるナイス体験が味わえる

何にしても、車道の左端を走って抜ける以外に選択肢はない。リアのライトをしっかり点けて存在をアピールしつつ、フロントライトで正面の路面を照らして集中力を切らさず黙々と漕ぐのみである。積丹と合わせて、一生分のトンネルを経験した気持ちになれます。

トンネル、トンネル、ヒルクライム、トンネル

厚田を出て、まずは滝ノ沢トンネル、太島内トンネル、新赤岩トンネルの三連発(合計4.5kmくらい)をクリアすると、難読地名で名高い濃昼(ごきびる)の峠越えになる。斜度は緩く標高も200m程度なので特にキツくはないのだが、クライムの途中では濃昼トンネルという「登りのトンネル」が登場する。比較的短いが、速度が落ちるのでクリアにまあまあ時間がかかる。歩道はなく路肩は狭く、そしてやっぱり大型車がそこそこ通るので、進路が左右にブレないように気を付けて淡々と漕ぐ。上り坂の途中には少しだけ木々の切れ目があり、上からの海の眺めを楽しめる。

峠のピークでは全長3,000m程の「新送毛トンネル」が登場する。トンネル内は緩く登り続け、途中で下り坂になる。路面はいいのだが、路面の先まで見えるほど照明が明るくはないので、速度を抑えて安全に下る。ここで何か踏んづけて落車するわけにはいかない。トンネルを出た先は快適なダウンヒル、を期待したが、アスファルトがボッコボコでまともに走れず、残念ながらここでもポンピングブレーキをしながらゆっくり下っていく。北国の舗装は維持が大変なので仕方ない。

下り坂が終わると道は再び海沿いに戻り、浜益地区の小さないくつかの集落を抜けると、いよいよこの旅の最強ボスである浜益トンネル(4,216m)が登場する。実際にはその手前の二ツ岩トンネル(1,793m)とほぼ連続しているので、実質的に合計6kmを超える長大トンネルとなる。まあ6kmなら時速25kmで走っても15分程度で抜けられる距離だし、言うほど大したことないだろう。。などということは全くない。入口から少し入って照明が暗くなり始めると風景は全く変わらなくなり、いくら漕いでもこのトンネルには終わりはなくて、自分はもう無限にここを走り続ける運命なのではなかろうか、みたいな謎の浮遊感を感じ始める。サイクリストにとっての精神と時の部屋は北海道にありました。路面がフルウェットでタイヤが水しぶきを巻き上げる区間もあり、緊張感を高める要素には事欠かない。延々と漕ぎつづけて、暗闇の向こうにようやく出口の光が見えた時は中々の感慨に浸れる。某リンドバーグさんよろしく「翼よあれがパリの灯だ」などと叫んでもいいだろう。

サイクリスト、浜益トンネルの出口の光が見えるこの待避所で写真撮りがち

浜益トンネルをクリアしたらすぐに雄冬の集落に差し掛かる。雄冬がかつていかに陸の孤島であったか、前知識を入れてからここを通ると感慨もひとしおなので、ぜひ事前調査をしてから訪れることをオススメしたい。

雄冬を抜けると、短めの洞門とトンネルが連発するエリアに入る。海沿いの岩塊にいくつもの洞門がくり貫かれた様は圧巻である。洞門内は日が差し込んで明るくトンネルよりは解放感があってマシな気がするが、路肩は相変わらず狭く、天候によっては風も吹き込むので、やっぱり注意力は切らせない。そして道はマッカ岬に向かって徐々に登っていく。標高は150mしかなく、ヒルクライムとしては特にキツくはないのだが、ここでの課題は上り勾配の長大トンネル。特に黒岩トンネル+日方泊トンネル(4.3km)が長い。緩いとはいえ上り坂なので、平坦と比べて明らかにスピードが落ちて自転車が進まず、トンネルがなかなか終わらない。体感的にはオロロンラインで最も長く感じるトンネルかもしれない。日方泊トンネルをクリアしてさらに山頂に向けて上った先で、全長700mほどのマッカ岬トンネルに入る。ここも緩い上りのトンネルでメンタルが削られるが、もう頑張るしかない。マッカ岬トンネルの出口には橋がかかっていて、橋の向こうにはペリカトンネルがつながっている。二つの山にトンネルを掘って橋で連結するという、中々見ない構造である。このルートに道を通して維持管理しているという偉業に改めて敬服するしかない。オロロンラインを走っていると、地形の厳しさと美しさ、道路インフラ事業への驚きと敬意を感じることができるだろう。

マッカ岬トンネルの出口で片側通行で止められるの図

ここから先はしばらく下り基調。橋の向こうの比較的短いペリカトンネルを抜けたら、最終最後の大別苅トンネルに突入。下り基調なのでスピードが出すぎないように慎重に走ってトンネルを抜けたら、本当に長かったトンネル祭りは完全閉幕。本当にありがとうございました。この先には稚内までもうトンネルはない。嗚呼なんということでしょう。二週間の夜勤バイトを終えて家路についた朝のような、ものすごい解放感である。多幸感に満ちて、大別苅川沿いの緩い下り坂をウイニングラン気分で海に向かって降りていく。

増毛から留萌へ絶景ルートを走る

これこそが観光客が期待する夏の北海道

断崖絶壁とトンネルの厳しいエリアが終わり、一気に平和になった国道231号線を海に沿って北上する。空は高く晴れて爽やかな風が吹き、草と低木の濃い緑に挟まれた道路が曲がりながら丘を下って海に伸び、その向こうにはこれから進んでいくオロロンラインの海岸線が遠く浮かんでいる。この景色の抜けと奥行きたるや。あなたが民生ファンならば、是非ここで満を持して「名曲をテープに詰め込んで あの向こうの もっと向こうへ」と熱唱してほしい。あるいは海と青空に誓うのもいいだろう。今こそがそのときである。民生はよく分からんという皆さんには、次点でSwallowtail Butterflyをお勧めしたい。夏草揺れる線路(道路)を遠くまで歩いた気持ちになって、北国の短い夏の空気を堪能してほしい。

お気に入りの歌を脳内再生して上機嫌で巡行すると、ほどなく増毛の町に入る。国道231号線は町の途中で右に折れていくが、ここは曲がらず直進して道道301号線を増毛港方面に向かう。道沿いには旧増毛駅などちょっとした立ち寄りスポットがあり、観光地の雰囲気がある。小綺麗でおいしそうな飲食店もいくつか並んでいるが、まだ昼食の時間には早いのでスルー。増毛港に出たら右に曲がり、廃線になった留萌線の線路を右手に見ながら海沿いを走って国道231号線に戻ると、海の向こうの海岸線に2本の風力発電機が小さく回っている。別苅から留萌までの間は、この奥行きのある景色が繰り返し楽しめる。最高である。

バスの待合所がいちいち味を出しすぎている

さて留萌に入るとしっかり大きな街並みが広がり、乗用車を中心に交通量が増える。交差点ごとに信号があって、赤信号で止まることに違和感を感じていることに気づく。ちょうど12時を回ったところであるせいか、昼食に行くと思われる勤め人の皆さんや学生グループなど、屋外に人がたくさん出ている。歩道を多くの人が歩いているのを見るのは久々である。やはり留萌は地域の中心都市ということなのだろう。多少は観光もしたいので、ここで国道を外れて市街地に入り、廃止されて今は使われていない留萌駅跡に立ち寄る。

いつ取り壊されてもおかしくない雰囲気だが

駅舎は閉鎖されていて入れないが、プラットフォームの端から構内を覗ける。使われなくなった線路の上に、北国らしい黄色い花が咲いている。またもやSwallowtail Butterflyが勝手に脳内再生される。

この黄色い花の演出効果が高いのよね

旧留萌駅と留萌市街の雰囲気を味わったら再出発。留萌には道の駅もあるのでここで休憩してもいいが、ひとまず補給食(ようかん)でエネルギーが足りている感があったのでスルーして北上する。さて留萌を出るとオロロンラインの雰囲気はまた変わり、真ったいらな直線道路、右側に緑の丘、左手は海、のセットが基本構成になる。

留萌から先の典型的なオロロンラインのイメージ

これはこれでオロロン感満載な味わい深い景色なのだが、ここからしばらく同じような風景と構図が続き、変化に乏しくなる。オロロンラインのライドで風景が変わらなくて飽きたとか退屈だったというコメントをWeb上で散見するが、おそらくこのエリアのことを言っているのだろう。留萌スタートで北上すると、確かにそう感じるかもしれない。

このエリアでは路肩は狭いとは言わないが広くもなく、舗装が荒れた部分もあり、そして地域の物流幹線なのでダンプやトラックがバンバン走る。あんまり気を抜いた走行はできない。まあトンネル祭りよりはずっとマシなので、淡々と黙々と下ハンで巡行していく。若干メンタルの修行感が出てくるが、これもまた北海道のスケール感を味わえる自転車旅の醍醐味と言えるだろう。そういうことにしておこう。

少しくたびれ感を覚えはじめたところで、道の駅おびら鰊番屋にチェックイン。この前後には商業施設がないこともあってか、平日の昼にも関わらず乗用車で移動する観光客とバイカーたちで賑わっている。ここではオススメの鮭イクラ丼を注文する。うむ、普通にウマい。上等である。若干遅めの昼食を済ませて、またしばらくド平坦な海沿いルートを黙々と巡行していく。

苫前の町を抜けたあたりから、多少のアップダウンが始まってルートに変化が戻ってくる。丘を上がったり下がったりしながら、羽幌の町を抜けて先を目指す。

苫前から先では丘をいくつも越えていく

このあたりで、改めて「オロロンライン長いな」と感じ始める。初日と二日目は変化のある地形に驚いたりトンネルをクリアするのに一生懸命でそこまで距離は感じなかったが、今日は「一本の道を一日中ひたすらに進む」というまた違ったテイスト。北海道の広さと!オロロンラインの長さが!言葉でなく心で理解できた!三日目である。ありがとうプロシュート兄貴。これこそがロングライドの醍醐味だろう。そして左手の海に徐々に太陽が傾きだした頃、下り坂の向こうに初山別の町が見えてきた。今日のゴールも近い。

緩い下り坂の向こうに海沿いの集落が見える

初山別村で個人的に楽しみにしていたのが、セイコーマート初山別店に立ち寄ること。いつだったかのNHKの番組「72時間」で真冬に三日間取材の舞台になったコンビニである。私は熱烈な72時間のファンではないが、北国の厳しい冬系のコンテンツに弱いところがあり、初山別の回は強烈に印象に残っていた。今は初夏だし、当然ながら特に変哲のない普通のセイコーマートだが、この店を狙って寄ったであろうバイカーグループが店頭で記念撮影などしている。ご同輩か?うむ、撮るがよい。私は私で店内を一回りしてから、セコマブランド「北海道メロンのクリームソーダ」や菓子パンなどを購入し、これがいわゆる聖地巡礼というやつだろうか、などとしょうもないことを考えつつ店頭でソーダを飲み干し、満ち足りた気持ちで今日の宿に向かって再び自転車に跨った。

個人的伝説のコンビニ、セイコーマート初山別店

初山別村の中心部を出て、短い坂を上がって5kmほど進むと、今日の宿泊場所である「しょさんべつ温泉岬の湯」に到着。ここは典型的な保養所タイプの歴史を感じる温泉施設で、バイクを客室内に置かせてくれる。防犯面で安心なのはもちろんのこと、ロングライドの合間に自室で落ち着いてバイクのチェックができるため、サイクリストとしては大変ありがたい。しかし「客室にバイクを入れてもいいが建物内では車輪を床につけてはならない」というルールが課されるため、自室までバイクを担いで持ち込むことになった。別に構わないのだが、珍しいパターンではある。

この旅唯一の温泉宿で風呂を堪能する

腹が減っているので先に晩御飯にする。北海道らしくしっかり美味くボリュームも満点。コメがうまい。食事をしたらウェアをコインランドリーに突っ込み、温泉でゆっくり温まってからウェアを回収し、デバイス類を充電してバイクをチェックする。

さて翌日以降の天気予報を確認すると、雨の心配はないが風はさらに強まるらしい。明後日は終日強い南寄りの風となっている。つまり稚内から旭川方面に向かうルートは一日中横風気味の向かい風ということになる。このディープリムホイールでは強い横風を捌けないことが分かっているので、ここで稚内からの自走での南下を諦め、鉄道輪行で旭川に移動することを決定。えきねっとで早々に特急サロベツの座席を予約する。ああ、ローハイトで来れば良かった。。。しかしもう行くしかない。明日はこの旅のクライマックスであるオロロンライン最終盤なので、ぜひ楽しみたい。体力を回復させるべく、今日も早々に就寝。

本日の走行距離:169km
移動時間:7時間30分(グロス9時間30分)

 

Day 4:初山別→稚内→猿払

今日は、この旅の主目的であるオロロンライン最北部を目指す4日目。稚内を回り宗谷岬で記念撮影して稚内に戻ってきて宿泊するプランである。予報によると昼過ぎから南西の風が強まるとのことで、早いうちに距離を稼ぐべく宿の朝食はスキップ。前日にセイコーマートで買い込んであったパンやらゼリーやらを手早く摂って7時にチェックアウトする。

空は今日も雲一つない快晴で、脚の疲労もなく体調は上々。軽い追い風の中を稚内に向けてスタートしていく。初山別からしばらくはマイルドなアップダウン区間。丘を上りきると下り坂の向こうにまた次の丘が見える。体調がいいので軽くダンシングを交えて調子よく坂を越えていく。海沿いに戻ると道はフラットになり、いかにも北海道と言いたくなる長い直線区間が始まる。地平線の先に向かって道路が真っ直ぐ消失していく。脇を追い越した巨大なトラックがいつまで経っても視界から消えず、対向車線の車は中々近づいてこない。当たり前だが信号などない。程良い追い風に乗って、鼻歌交じりで35km/h超で巡行する。最高オブ最高である。写真を撮りたくなる絶景が続くのだが、巡行が気持ち良すぎてなかなか止まれない。

道の先が見えないというやつです

追い風パワーであっという間に遠別の集落に到達する。ちなみにオロロンラインは遠別で右に曲がり少々海から離れていくが、ストリートビューによれば、ここで左に折れると12kmほどの交通量極小のステキな海沿いの道を走れるようだ。今回はそのまま国道231号線に沿って巡行し、快調に飛ばして1時間もしないうちにあっさり手塩の町に到着。町の中を一周して雰囲気を味わったら、町の北端にあるセイコーマート天塩川口店にチェックイン。オロロンライン最北部に挑むにあたっての最終補給地点として、稚内を目指す全てのサイクリストが立ち寄る(多分)と噂される重要ポイントである。ここでは満を持してホットシェフのおにぎり2種を購入する。店内で握られたおにぎりはホカホカと温かくフワフワで、塩加減も程よく、文句なく美味い。ペロリと食い尽くしたら、オロロンライン最終盤に挑む準備はOK。

ホットシェフの鮭とたらこ。アルファでありオメガである

さて、いよいよである。長らくお世話になった国道231号線を離れ、道道106号線に乗り換えて北上する。天塩川河口大橋を渡って緩いカーブを曲がると海の向こうに利尻島が浮かび、道の先には小さくオトンルイの風車群が見えてくる。これまでの長い道のりを考えると中々に感慨深い景色。交通量は少ないかと思いきや、天塩川の河口近くに採石場か何かがあるらしく、土砂を積んだダンプが次々と高速で追い抜いていくので注意を払って走りつつ、徐々に大きくなる風車群の景色を楽しむ。

ここを通る全サイクリストが写真を撮るところ

思ったよりも長く続く風車群を通り過ぎると、風景はさらに変わっていく。道道972号線との三叉路(稚内まで54km地点)を過ぎたところで歩道がなくなり、大半のダンプやトラックがここで曲がっていくので交通量が格段に減る。さらに走ってスノーシェードを越えて豊富町に入ると、路肩の段差すらも消え、ガードレールもロープもなくなり、いわゆる「人工物が何もない」エリアに入る。

サイクリストの桃源郷です

視界には草原と空と海と道があるばかり。天気予報の通りに強まっていた南西の追い風を受けて、軽くペダルを回すだけで巡航速度は40km/hに達している。左手には、風に揺れる草原と白波が立つ海の向こうに利尻島が大きくなり、唯一のランドマークとして圧倒的な存在感を放っている。いわゆる「何もないのに全部ある」というやつである。ちょっと予想以上のパッケージというか、このトリップ感は信じがたい。このままあと100kmくらい延びてくれないだろうか。

しかし、この最高感は天候と風向きに大きく助けられているのは否めない。曇りで強い向かい風、みたいなコンディションだと、かなりつらい体験になるだろう(思い出にはなるだろうが)。全世界のサイクリストに、天気予報を良く見て、スケジュールをうまく調整して、ここをぜひ(適度な)追い風基調の日に走ってもらいたい。

夢のような豊富町区間を抜けて、稚内市に入ると道の両脇にガードロープが復活するが、景色はまだまだ素晴らしい。多少のアップダウンが登場してくるが、驚くほど脚が回っており、上り坂も35km/hで余裕でクリアする。うん?いやちょっと待ってほしい、上りでその速度はおかしくないですか?はい、そのとおりです。追い風が強すぎるせいです。そう、稚内に近づくにつれて風速はどんどんと強まり、今や爆風と言えるレベルになっている。展望所で車を止めた観光客が降りようとしてドアを風に持って行かれて慌てるレベル。帽子が飛ぶのはもちろんである。予報である程度分かっていたつもりだったが、これはちょっとヤバいかもしれない。今日はここまでひたすら追い風の恩恵ばかりを受けてきたが、そろそろ夢が終わり、現実と向き合わねばならないらしい。

ここから左に曲がっていくにつれて横風ゾーンに

ゲストハウス「こうほねの家」を通過して道が左にカーブしていくにつれて、風も左からの横風に変わり、無駄にディープリムなバイクは思いっきり煽られ始めて緊迫感が一気に増してくる。ブラケットポジションが厳しくなり、下ハンをガッツリ握って姿勢を低くしてチェーンにトルクをかけつつ慎重に急ぐ。そして抜海の町に入ると道道106号線は90度曲がって東に折れるのだが、ここでついに風向きがモロ横風となる。普通に15m/sを超える突風がランダムに吹きつけ、もはや走れたもんではない。先ほどまでの桃源郷ライドはどこへやら、完全に試される大地モードにスイッチしてしまった。

さて、右手から吹き付ける強風に耐えて必死で走っているときに、対向車線を高速で走るトレーラーとすれ違うと何が起きるだろうか?答えは「すれ違いざまに一瞬無風になったと思ったら次の瞬間に爆風で左側に吹っ飛ばされる」である。ハンドルが取られるとか横に倒されるのではなく、走行ラインがそのまんま(体感で)50cm横にワープする。幸い左側にスペースがあったので無事だったが、段差や溝があったら落車は確定モノ。あ... ありのまま今起こったことを話すぜ!などとふざける余裕もない恐怖体験である。泣きたいシチュエーションだが、何にしても稚内までは辿り着かねばならない。下ハンで常にブレーキレバーに指をかけ、集中力を総動員してノシャップ岬を目指して走る。後から考えると、この状況で律義にプラン通りにノシャップ岬に寄る義務はないわけで、ルートを変更して道道106号線で丘を越えて南稚内にショートカットするとか、何なら時間帯的には抜海駅から鉄道輪行で離脱する選択肢すらあったのだが、やはり冷静な判断力を欠いていたらしい。

抜海の町を過ぎてノシャップ岬に向かう海沿いの道は引き続き景色の抜けがよく、北国の夏感満載のナイスビュールート。しかしながら、今は風とのバトルにリソースの9割を投入しているのでエンジョイする余裕はない。ほうほうの体でノシャップ岬に辿り着いて、バイクをすっ飛ばされそうになりながら記念撮影をする。

爆風のノシャップ岬

時刻はまだ正午過ぎで時間には余裕があるが、風が危ないので宗谷岬は断念して、南稚内の宿でライド終了とすることに決定。しかしノシャップ岬から稚内市内に向かう道は完全な横風。煽られた電線が頭上でビュウビュウと唸り音を上げている。車道は(自分がフラつくので)危なくて走れたものではない。もしコケても自爆だけですむように、誰もいない歩道を10km/hくらいでノロノロ進む。稚内中心部に辿り着くだけでも一仕事である。

稚内名物、そこらへんの空き地で普通に草を食むエゾシカ

中心街に近づくと、裏山がガードしてくれるおかげか、多少風がマシになってバイクでの移動がしやすくなる。宗谷岬を諦めて時間が十分余っているので、駅前やら防波堤ドームなどの定番スポットで記念撮影をして回って多少の観光気分を味わう。快晴の稚内駅周辺にはアウトドア系の格好をした中高年ツーリストの集団が目立つ。ドイツからバイクを持ち込んで北海道一周をしているという若者としばし雑談を楽しむなどして、南稚内駅方面に移動して106号線沿いのシブい洋食屋でポークチャップ定食をゆっくり味わい腹を満たしたらホテルに移動。このホテルは部屋へのバイク持ち込みは不可だったが、この時点で翌日は鉄道輪行すると決めていたので、玄関先で早々にバイクをパックして輪行状態でチェックイン。ウェアを選択して風呂に入って一休みして、夕食のために南稚内駅前の出てみるが、居酒屋系飲食店はどこも混んでいて予約なしで入れる感じではない。もうそれほど地元の海鮮にこだわる気持ちもないので、駅からちょっと遠い地元系の中華料理屋で餡かけ焼きそばっぽいものを頼んで晩御飯完了。就寝。

本日の走行距離:117km
移動時間:4時間15分(グロス5時間30分)

 

Day 5:稚内→旭川→旭川周回

特急サロベツ輪行で旭川へ

5日目はまず、JR北海道で南稚内から旭川まで輪行する。5時半に起床して着替えて荷造りし、ホテルの近くのセイコーマートで食料を調達。時間が早すぎてホットシェフのおにぎりはまだ作られていない。無念。バイクを抱えて南稚内駅に移動し、定刻の特急サロベツに乗車。さらば稚内。宗谷岬はまたいつか。マイバイクを通路の隅の手すりに括りつけて車掌さんに断りを入れ、自分の座席に座る。この車両(キハ261系)は関東の標準的な特急車両と比べると車両最後部のスペースが狭く700cのロードバイクはちょっと置きづらい。そのあたりの事情は別のエントリーに。

さて早朝の特急の車内には乗客も少ない。朝食のオニギリとスムージーを摂りつつ窓の外を眺める。南稚内を出て少しすると抜海あたりで遠くに海と利尻山が見えるが、線路はすぐに内陸に。旭川まで牧草地と森の中を快走していく。窓の向こうの木々は風に大きく揺れていて、やっぱり自走は厳しそうな雰囲気。目的地までは3時間半の旅だが、相変わらず私にとっては特に長くもなく、すぐに旭川に到着。毎度のことだが列車は速い。

ここで最終の宿を取る計画だったが今回は通過。またいずれ

昨日でオロロンラインが終わってしまったので、正直に言うと旅のテンションはピークを過ぎている。とはいえ時間は結構あるし、徒歩で旭川の観光スポットを回りたい感じでもないので、半日で旭川周辺を一周してライドの最後を締めることとする。

旭川周辺一周ライド

旭川には全く土地勘がなく、どこを走るべきかも分からないので、前日に見つけた「石狩川流域サイクリングマップ旭川美瑛編」に掲載の「まるごと周遊コース」を選んでみることにした。距離は100km。多少のアップダウンがあるが、日没まで6時間以上あるし体力も十分残っているので問題はないだろう。最後まで北の大地を楽しみたい。

ちょっと初見だと走りづらいルーティング

天気は快晴、風はまだ吹いているが困るほどの強さではない。旭川駅の南を流れる忠別川のサイクリングロードを11時過ぎにスタートする。今日は事前に計画していないルートなので、ガーミン先生にマップ登録をしておらずナビなし走行となる。案の定、サイクリングロードの乗り換えや一般道に戻るポイントなどをミスしまくり、少し走ってから何が違うなと思って止まってスマホを見て気付いて分岐点に戻る、という展開を連発してしまい中々先に進まない。やはり見知らぬ土地でのナビなしはキビシイ。

いずこもあまり変わらない河川敷の雰囲気

さて前半の忠別川から石狩川沿いのサイクリングロードは平和で走りやすいが、見晴らしが特にいいわけでもなく、キャッチーな要素はあまりない。両側に夏草が茂る道を淡々と走る。川沿いサイクリングロードは全国どこに行ってもある程度は似た感じだなあ、などと考えつつ、20km弱走って郊外で一般道に出て、旭山動物園の脇を通り、東川町を抜けて南東に進む。このあたりでも何度かミスコースして、少しづつ到着予想時間よりも遅れ始める。できればちゃんとした食事処に入って昼食を摂りたかったのだが、ペースを考えて、道の駅ひがしかわ道草館でソフトクリームやら蒸しパンなどの甘いものを口に詰め込んで昼食替わりとする。

東川町を東に向かうと徐々に旭岳が大きくなる。なるほどこれが旭川市民の心のシンボルか、地元にランドマーク的な山岳があるのっていいよね、などと関東平野民的な考えをめぐらしつつ、道道1106号線をさらに南東に走る。

道の左側には水量多めの水路が走り、向かう先からどうどうと大量の水が流れてくる。随分といい勢いで流れてくるなと思ったら、やはりフラットに見せかけて緩く長い登り勾配がすでに始まっていた。向かい風基調なこともあり、スピードは上がらない。下ハンで黙々と漕いでいくと、徐々に道は森の中に入り、忠別湖に向けてヒルクライムが始まっていく。勾配はキツくはないが暑い。汗だくで登り切り、ダムの管理施設で冷えたコーラを飲んで一休みしつつ忠別ダムの歴史や成り立ちなどを学ぶ。ダムで記念撮影をしたら折り返し。

旭川市民の水がめ

風向きもようやく追い風基調に変わり、美瑛駅に向けて下り基調の道を飛ばしていく。美瑛駅に到着したら駅舎前で記念撮影してボトルに水を補給。ここには10年以上前に観光で来て以来だが、まさか自分の自転車で来ることになるとは思っていなかったので少々感慨にふけ.... りたいところだが、時間にあまり余裕がないので10分も経たずに離脱。途中まで来た道を戻る。結構長々と同じ道を戻ることになり、このコースは美瑛駅まで行く必要あるのだろうかと若干思いつつ、ようやく分岐点まで戻り、就実八幡神社の前を通る道(ここの曲がり角が分かりづらい)を就実の丘に向けて上がっていく。

いわゆる美瑛の丘陵地帯に向かう道は、獲得標高は大したことはないが結構しっかりした勾配の上り坂が続く。知らずに普通のママチャリでうっかり迷い込んだら泣きを見るだろう。人も車もほぼ通らない坂を上りきって就実の丘にたどり着くと、いきなり沢山の観光客と多くの路上駐車が現れてちょっと驚く。積丹のウニ丼屋状態である。就実の丘は記念撮影を楽しむインバウンドの皆さんで混み合っているのでそのままスルーして、道を曲がって下りと上りが連続した直線道路をクリアしていく。「新ジェットコースターの道」と呼ばれているらしい。遠くから見ると行く手が強烈な上り坂に見えてゲンナリしたが、実際に走ってみるとそれほど激坂ではなくあっさりクリアできた。望遠レンズで坂道を遠くから抜くと激坂に見えるというアレである。

メジャーな写真撮影スポットらしい

坂を上りきって畑の間を真っすぐ走り、旭川空港の裏を抜けて市街地に戻り、再び忠別川沿いのサイクリングロードに乗る。太陽も傾きオレンジ色になり始めた空を見ながら旭川駅に向かって走る。ここでも二度ほどミスコースするが、なんとか日没前にゴールに到着。ガーミンのサイコンによれば走行距離は116km。Oh... ルートマップよりも16kmも長い... そこまではミスコースしてないと思うのだが... まあ何にしても無事に戻ってこられたし楽しかったので良しとする。旭川駅前で記念撮影をして、これでライドのグランドフィナーレ。

お疲れさまでした

今日の宿は道を渡った向かいにあるホテルルートインGrand旭川駅前。部屋に自転車を入れさせてくれるルートイングループにはいつも本当にお世話になっております。窓の外には旭川駅前の全景が見え、部屋も綺麗で広く言うことなし。

晩御飯は満を持して旭川ラーメン大盛りを狙って街に出るが、なんとどの店も衝撃的に行列している。旭川にもオーバーツーリズムの波か。。。目星をつけていた店を順番に巡って、何とか待ち行列が短い店を見つけて大盛ラーメンと餃子で腹を満たし、ホテルに戻ってウェアを洗って風呂に入って、翌日の空港行きバスの発車場所と時刻を確認して、バイクをパッキングして、就寝。

本日の走行距離:114km
移動時間:5時間5分(グロス6時間20分)

 

Day 6:旭川 → 東京(飛行機輪行)

今日は朝から雨模様、というか普通に雨だが、東京に戻るだけなので問題はない。飛行機は午後発なので急ぐ必要もない。ゆっくりホテルの朝食バイキングを食べて、裏のセイコーマートで再度ホットシェフのおにぎりを確保して、余裕をもってチェックアウト。ホテルを出て信号を渡ったらすぐに駅前のバス乗り場である。座席を予約できない一般乗り合いタイプの普通の路線バスなので、ちょっと早めに並ぶ。観光客は少なめで、旭川中心部と郊外を往来する地元民の皆さんが各停留所で乗り降りして入れ替わっていく。路線バス内に持ち込んだバイクはちょっと大きめの荷物になるが、幸い混雑するところまではいかず、無難にバイクを空港まで運ぶことができた。

今回は初の飛行機輪行だが、手続きに関しては特に難しいことはない。手荷物カウンターで自転車であることを申告し、簡単に袋の中をチェックされ、「ぶっ壊れても責任持ちませんよ、了解しました」という会話のあと「横置き時はこちらを上に」と書いたテープを貼ってもらい、手続き終了。リアディレイラーの保護などは特にしていないので、あとは羽田で無事再開できるよう願うしかない。機材トラブルで出発が2時間遅れてロビーで暇を持て余したり、何故か座席がファーストクラスに無料アップグレードされていたりなどの小ネタを挟みつつ、羽田に到着して手荷物受取所で待っていると、ベルトコンベアーが回り始めたとたんに先頭でいきなり横倒しになった赤い輪行袋が押し出されてきてちょっと面食いつつも回収。輪行袋にいくつか穴が開いてしまっているが、本体には大きなダメージはなさそう。仮にあったとしても異議は唱えられないし、この場で乗るわけでもないので、それ以上のチェックはなし。バイクを抱えて平日夕刻の都心で電車に乗るのは避けたいので、ちょっと時間はかかるがリムジンバスに乗って地元に戻って無事帰宅。これにて冒険終了。お疲れさまでした。

本日の走行距離:なし
移動時間:9時間10分 (飛行機の遅延はあったがそれでも長い

 

それでは北海道西海岸の旅 総括と大反省会

トンネルと横風には苦しめられたし、終盤ではプランの変更やショートカットを余儀なくされるなどしたが、ほぼ全行程で天気に恵まれ向かい風もなく、最後まで体力気力とも十分で、落車や機材トラブルもなし。目的だったオロロンライン完走を果たし、トータル大満足な旅だった。この素晴らしい体験を忘れることはないだろう。

バイクと装備は問題なし

直江津ライドや富山福井ライドで事前に叩いておいたこともあり、バイクと装備品についてはプラン通りで問題なし。トンネル対策として、フロントライトとリアライトをそれぞれ増設し、アイウェア2本持ち(スモークありとなし)にしたのは正解だった。明らかな失敗だったのはディープリムホイール。北海道の海沿いの横風に終始気を配らなければならなくなったし、終盤は落車の危険もあった。また北海道に来ることがあればセミディープかローハイトにするだろう。というか泊りがけロングにはもうディープリムは使わない。

10年落ちのCanyon Ultimate君はこの長い旅でも再びノートラブルで元気に完走。愛用のSchwalbe One 25C (クリンチャー)もパンクなし。あなありがたや。

走行プランも順当

多少の観光を交えつつ安全で元気に連日走れる距離は一日160km程度だと分かっていたので、その通りにプランを組んで、その通りに完走できた。山岳らしい山岳がほとんどなかったのでペースを守りやすかったところはある。

ルートを振り返って

最初から最後まで北海道らしい魅力満載のルートであり、ロングライド欲求が完全に満たされる最高の旅だった。しかし走って改めて理解したのは、北海道の日本海沿いの道路は町や集落をつなぐライフラインであり、厳しい地形に苦労して通された物流の大動脈だということ。よって(もちろんエリアにより差はあるが)早朝以外は終始業務車両が走り、ダンプやトラック、トレーラーなどの大型車も多い。当然、サイクリングが考慮された道路では全くないので、常に安全に気を付けつつ謙虚に走りたい。とは言っても大型車は本州よりも大きめに避けてくれる(ような気がする)し、トンネルを除けば路肩にはある程度は幅があるし、国道8号線の敦賀近辺や親不知のような「ワンミスで死にます」的な場所は少ないので、普通の交通マナーを守っていれば危険ではないだろう。とにかくトンネル内での前方後方アピールだけはきっちりやることをオススメしたい。

総じて、あなたがトンネルを苦にしないなら、北海道西岸全線走破は絶景満載のオススメコース。普通のサイクリストのあなたには、増毛から北を推奨します。札幌からバス輪行で直接増毛にリーチできるはず。便数は少ないみたいだけど。留萌本線が生きていればなあ。。

エリアごとの短評

  • 積丹半島外周:自然の造形美と絶景のオンパレード、だがあまりにもトンネルが多過ぎる
  • 小樽から札幌あたり:普通の郊外の幹線道路(笑)
  • 石狩川から厚田近辺:厚田に近付くにつれ平和な風景に
  • 暑寒別岳西岸 雄冬エリア:厳しい自然の造形美と怒涛のトンネル祭り再び。ヒルクライムもあるよ
  • 増毛から留萌:旅情最高。北国の夏を走る素晴らしさが凝縮されている
  • 留萌以北から苫前あたり:交通量多めで風景の変化少なめな海岸をひたすら走る
  • 羽幌から初山別周辺:海辺の丘をいくつも越えていく風景の魅力が楽しめる
  • 遠別から天塩あたり:先の見えない直線の醍醐味と終盤が近付く演出感
  • 道道106号線 天塩町部分:オトンルイ風力発電所の風景をお楽しみください
  • 道道106号線 豊富町部分:異世界。行って体感するしかない
  • 道道106号線 稚内市部分:北端のフィナーレ感をお楽しみください

 

以上。旅が長かったのでエントリーも長くなり。では皆さんよいロングライドを。

 

 

フロントホイールのリムハイト50mmと38mmで横風の影響を比べてみた

リムハイト50mmはやっぱり横風を捌きづらく、38mmだと格段にやり易くなった、といういちホビーライダーの個人的な経験談です。

ディープリムで横風を受けると

さて過去のエントリにも書いたとおり「一回ディープリム使ってみたい病」に罹患した私だが、さりとて今からリムブレーキ用にウン十万するハイブランドホイールを買う気にもなれず、結局某Aliでお安めの50mmハイトのカーボンホイールを購入。見た目がイカつくなったマイバイクで利根川から荒川を周回し、一人直江津集合に挑戦し、富山から越前海岸ライドを楽しんでみたり、そして最終的には北海道にチャリを持ち込んでオロロンライン北上の夢を叶えたりなど、各所でライドを満喫した。

で、ライドは楽しかったのだが、色んな場所と条件で使って思い知ったのは、やっぱり「ディープリムは横風の影響をすごく受ける」ことだった。当たり前すぎる結果としか言いようがないが、まあこれも自分で体験してみてこそ腹落ちするというものである。そして「ディープリム横風問題」にはいくつかのバリエーションがあることが分かった。

  • それほど強くない横風でも、ハンドルがフラフラ揺れる感覚がある。進路が狂うほどではないが、あまり愉快ではない
  • 大型車が横を通過すると風圧でハンドルを取られる。車の速度が高い地方の幹線道路や、空間が狭いトンネル内などでは、油断していると走行ラインがズレるほど煽られることもあるので、段差や壁ギリギリを走行していると危ない
  • バイクの速度が上がるとフラつきやすくなる。特に、下り坂でペダルを止めて、リアの推進力がない状態でそこそこ速度が乗っていて、ここで横風が吹くと、独特のフワフワ感が生じて緊張感が高まる。頑張って峠を上ったあとのダウンヒルを安心してエンジョイできないのは何とも悲しいものである
  • 天気予報で表示されるところの「風速5m/s」あたりから、ハンドリングに影響が出始める。安定して5m/sの風が吹き続けるなら普通に対応できるのだが、当然ながら実環境の風には常にムラがあり、ランダムに8m/sとか10m/s級が混じってくるのが問題になる
  • 不意に進路がブレないようにハンドルをしっかり握り続けていると、当然ながら疲れてしまう
  • 10m/sを超えてくるとハンドルをホールドしていても進路を維持しづらくなる。瞬間的に混じる突風がヤバい
  • 15m/s超では走行ライン(というかバイクそのものの位置)が横に瞬間移動する。ローハイトリムの場合、ホイール部分は風が抜けるのに対して上半身はしっかり風圧を受けるので、風下側に倒れて落車しそうな煽られかたになるのだが、ディープリムの場合はホイール部分も効果的に風を受けるのでバイク全体が横に飛ばされるという違いが生じる。どっちにしても、こうなると走行不可能だが

風が弱い日を選べる日帰りライドならともかく、天候が読めない泊りがけロングライドにはディープリムは止めておくべき、というのが個人的な結論。

「横風に煽られる」とは

ディープリムで横風に煽られたときに受ける影響は、以下の2つにまとめられるように思う。

  1. ライダーも含めてバイク全体が横から押される
  2. ハンドル(フロントホイール)がブレて、自分の意図していない舵角になる

1についてはディープリムに限ったことではなく、横風によって全体が風下にプッシュされる煽られかた。対処としては風に逆らってバイクを倒し、体重移動でバランスを取りながら走ることになる。ディープだとより強く押されるので、比較的弱めの風でも影響が大きく感じられるが、ローハイト時と比べて挙動が異なるということはない。風が強くなりすぎるとディープリムではバイクが真横にスライドし始めてライド続行不可能になるので、そういう意味では「もう乗れませんという限界がディープリムだとより早く来る」と言える。

それに対して、2のハンドルがブレる問題はディープリムに特有で、ローハイトホイールだと結構な強風でもこういうフラフラ感は出ない。おそらく、自然の風は常に強さと向きが変わり続けるので、ホイール全体に均等に風が当たらず、場所によって異なる風圧がかかり、その結果ホイールの向きが細かく揺れて「ハンドルがフラつく」状態が生じるのだと思われる(個人の勝手な推測ですが)。このハンドル揺れには一貫性がなく、ブレ具合がランダムで読めないため、常に注意しつつ細かい修正を加えながら走ることになる。上級者だと技術と脚力でカバーできるのかもしれないが、ホビーライダーにとっては(特にメンタル面で)スリップダメージ状態になりライドを楽しめなくなってしまう。

ではどうするか

じゃあローハイトに戻しますか?いう話なのだが、見た目も含めてカーボンホイールの雰囲気自体は気に入っているので、ひとまず最小の差分として「フロントホイールのみを50mmから38mmに変更」を試してみることにした。メーカーも同じElitewheels。ハイト12mmの違いは果たしてあるのか?

今回の変更箇所

まずベースはこちらのElitewheels Flow S50。リムハイト50mm、前後重量1480g。

楽しくも厳しかった北海道ライド時のご尊顔

そして今回試すのは「フロントのみ」を38mmハイトに変更したもの。ENT-Rim brakeという名称でAliで売られている低価格帯製品で、前後セットでも5万円もしないベリーエントリーグレードのお買い得品である。都合よくフロントのみでフリマに出ていたのをゲット。ホイール重量は750g程度。

リアは50mmのままなので、思ったより見た目の印象は変わらない。むしろこっちのほうがバランスいいかな?

走ってみて

あえてライド中に10m/sクラスの風が吹くであろう日を選んで、定番の江戸川CRから利根川CRを走ってテスト。

吹きっさらしの利根川CR。この日は強い東風

うーん、かなり違う。すごく違いますよこれ。なんだこれ。

  • 風が吹けば、やはり横にしっかりプッシュされる。しかし、ハンドルのフラつき感がなく、ゆらゆらと震えるような挙動が出ない
  • ハンドルがランダムな挙動の変化を見せないので進路がブレづらく、制御しやすいので不安感が少ない
  • 風が強いこともあり、巡航速度の違いはよく分からない(笑)
  • リアホイールはハイトが高くてもあまり操作感に影響しない(しているようには感じない)

分かりやすく明らかな違いにちょっとビックリ。12mmの差で、こんなに違うものなのか?これならば、かなりの強風でなければ横風でも戦える。素晴らしい。見た感じの雰囲気もほぼ変わらないし。ダウンヒルでも同じかどうかは、またの機会にチェック。

まとめ

違いが明らかすぎるので、今後はフロント38mm、リア50mm常用で確定。フロントが安定しないと落車や事故のリスクが上がるし、ハンドルの制御を気にし始めると安心して踏めずに結局スピードも落ちてしまうので、リムハイトを下げてでもコントロール性を確保するのがトータルでバランスが良いと思われる。今回も普通の結論でした。

補足と推測

ハンドルのフラフラ感は、ディープリムだから、ではなくて、私が使ったホイールのモデルに特有である可能性もなくはない。くびれの入ったちょっと変わったリムのデザインだし。DT-SwissとかEnveのような一線級メーカーのワイドリム製品では急な挙動の変化が起きづらいようにデザインされていて、ディープリムであってもハンドルのブレが生じないよ、という可能性もある。そのうちディスクブレーキのバイクを新調することになったら検証してみたいが、いつになることやら。

 

では皆さん、よいライドを。

 

10年間使い倒したZwiftのメリットを改めて整理してみる

10年近くZwiftを使い続け、ゲーム内での走行距離も7万キロほどになったので、このあたりで改めてZwiftのメリットを簡単にまとめておこうというメモ。文章で語っていくと相当に長くなりそうなので、箇条書きで要点だけを。

Zwiftの何が優れているのか?

インドアでの長時間ライドを可能にした

  • ゲームチェンジャーです。いやマジで。
  • かつての室内ローラーは苦行でしかなかった。風景が変わらず脚へのフィードバックもない環境で長くバイクを漕ぎ続けるのは驚くほどにメンタルを削る行為。追い込むのも難しい、というか不可能だった
  • Zwiftによって室内でも楽しくバイクに乗れるようになり、室内で長時間バイクに乗れるのでインドアであることのメリットを十全に享受できるようになった

安全である

  • 転ばない。事故らない。ケガのリスクがない(3本ローラーでの転倒は知らん)
  • いつでも補給が取れる。ハンガーノックの心配がない
  • 常時DNF(ライド終了)可能。疲れたら終了できる。調子が悪くなっても帰路の心配はない

全力を出せる

  • 安全であるがゆえに、憂いなく躊躇なく全力を出せる。フルパワーでもがけるし、死にそうになりながら60分ノンストップSSTもできる

  • 長時間のライドにも(比較的)軽い気持ちでトライできる。PRL FullとかUber Pretzelとか

時間効率が高い

  • すぐライドを始めてすぐ終われる。10分で準備して走り出して、終わったら補給食を口に突っ込んでそのまま風呂に直行できる
  • 止まらず走れる。信号も交差点もないので停止時間がない。Zwiftでの一時間のライドは、正味で一時間のライドとなる

いつでも乗れる

  • 時間帯を選ばない。夜でも乗れる(住宅事情による制約はあるかもだが)
  • 天候に左右されない。外が雨でも雪でも風でも走れる
  • 生活の中に組み込みやすくパターン化が容易

数字とデータを知る楽しみ

  • スマートトレーナーを使うことでパワーが可視化され、さらに心拍数やケイデンスをリアルタイムで画面上で見ながら走ることで、自分の肉体と精神の能力が数字で分かっていく
  • ホビーライダーがデータを知って理解し、沼にはまっていく良好な入り口になる

本格的トレーニングメニューへのアクセス

  • 専門家がデザインしたメニューに即時アクセスできる
  • 単発ワークアウトのみならず期間の長い体系的メニューもある

世界中のライダーとのつながり

  • 多彩なライドイベントにいつでもすぐに参加できる
  • レースイベントへのアクセスの容易さ、敷居の低さ(そして奥深さ)

成長を続けるサービス

  • 長年機能し続けるコミュニティ(ユーザーフォーラム)

  • 利用者のフィードバックを受けて着実に強化改善されていくサービス。Zwiftの中の人は本当に素晴らしい仕事をしていると思う。SaaSサービス運営のお手本である

  • 個人的な歴代の神アップデートベスト3は
    • ペースパートナー(ロボペーサー)導入
    • テレポート機能
    • ドラフティングアルゴリズム(Pack Dynamics)改善

自由度の高さ

  • ソロのポタリングから大規模チャリティイベント、シリアスなレースまで何でもOK
  • 山にすぐ行ける(都内住みには重要)

デメリットはあるのか?

私は「楽しく続けられて基礎体力が向上すること」をZwiftに期待しているので、その観点で言うと、ほとんどデメリットは見つからない。良いことしかない。

あくまでもリアル実走が主体であって、実走で必要な何かを補完するためにZwiftをやっている人にとっては、いわゆる「実走スキル」は身につかない点がデメリットと言える。当たり前であるが。ダンシングが実走と違いすぎてて練習にならないとか、バイクコントロールとかペダリングスキルだとか。特にレースに出るような皆さんには。

あと個人的な経験からすると、Zwift世界に引きこもりすぎて実走の間隔が半年以上空くと、久々に路上に出たときにかなりの違和感を感じはじめるので、四半期に一度くらいはリアルで走っておくのが無難に思われる。

 

色々とビジネスの資金繰りも大変なご時世ですが、Zwiftの中の人たちには知恵を尽くしてこの素晴らしいサービスをこれからも続けていっていただきたいです。課金します。

ではみなさん、良いインドアライドを。

読書メモ:運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」by ハーマン・ポンツァー

運動しても痩せないのはなぜか
代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」
ハーマン・ポンツァー著 小巻靖子訳

運動しても痩せないのはなぜか | 話題の本 | 草思社

 

刊行から2年ほど経ってますが、サイクリストとして非常に面白い本を読んだので、今更ですが要約と感想をメモ。私個人が体験した感覚ともかなり一致する内容。

「運動しても痩せない」とはどういうことか?

「人間の一日の生体活動の消費カロリーは決まっていて(基礎代謝)、運動による消費カロリーと基礎代謝を合計したものがトータルのカロリー消費量になる。なので、運動すればその分カロリー消費が増えて、消費した分の体重が減る。たくさん運動するほど体重も落ちる」というのが従来の一般的な理解だった。しかし綿密な調査の結果、実はそうではなく「体を動かしている人も動かさない人も一日のカロリー消費量はほぼ同じ」になる、という衝撃の事実が判明した。にわかに信じがたいが、これは一体どういうことなのか?

人間は「高い持久力を活かして動き回って食料を得る狩猟農耕民」として、長い時間をかけて今の形に進化してきた。常に飢餓と戦いつつ、毎日体を動かして食べ物を確保し繁殖する生物として導き出された最適解として、ヒトの肉体は一日あたりの消費カロリーを一定の幅(平均的な成人男性で2500~3000kcal)に収めようとする非常に高機能な調整能力を持っている。この調整能力により、例えば多くの運動をして多くのカロリーを消費すると、体は運動以外の様々な生命活動を抑制して、トータルで同じ消費量になるよう帳尻を合わせてくる。従って「運動しても一日の総消費カロリー量は増えない」ということになる。

ただしこのプロセスは即日発動するわけではなく、多少の時間がかかるので、数日から数週間程度の短い期間においては、運動をすれば(なおかつ食事を増やさなければ)多くのカロリーが消費され、その分体重が落ちる。しかし時間が経過すると体の調整機能が効き始め、習慣的に運動をしている状態に体がアジャストし、運動以外の肉体の活動による消費カロリーが下がってくる。そしてトータルでのカロリー消費量は元の(運動習慣を身に付ける以前の)レベルに戻っていき、体重も元のラインに収束していく。本書の言う「運動しても痩せない」というのはこの状態を指す

何故太るのか?

あなたが健康である(代謝が正常に稼働している)場合、太る理由は一つしかない。それは「食べ過ぎているから」である。消費カロリーを上回る量のカロリーを摂取しているので、余ったエネルギーが蓄積されて体重が増える、というシンプルな話。消費カロリーと同等量の食事をキープしていれば、体重が過度に増えることはない。

では、どうして多くの現代人は太りがちなのか。なぜ必要以上の過剰なカロリーを摂取してしまうのか?それは「体を動かさなくても美味しい食料がいつでも手に入るから」。

現代の食料事情は異常事態

かつて人類は動物を獲物として狩ったり、植物の根を掘り起こしたり木の実や果物を集めたりして、その日に生きるためのカロリーを獲得してきた。しかしいつしかヒトは道具と火を使うことを覚え、近代では産業革命のようなトンデモブレークスルーを起こして短期間に条件を激変させ、食料事情を大きく変えてしまった。その変化とは

  • 食物の大量生産:好きなだけ大量に食べられるようになった
  • 食物の貯蔵:探し回らなくてもいつでも食事が手に入る
  • 食物の加工:食料を高カロリーで美味しく魔改造する術を開発した

この条件が揃ったのは人類史上初めてのこと。運動しなくても十分以上の食料が得られ、しかもその食料は加工されて栄養価(カロリー量)が高く、味が良いため脳の報酬系が刺激されて必要以上の量を食べてしまう。という前例のない食のコンボが成立している。人間の肉体はこのような大量カロリーの常時摂取に適応するようには進化していない。結果として、現代人は飢餓のリスクを回避できるようになったが、代わりに肥満を始めとした生活習慣病という新しい生存上の問題を抱えるようになった。

ではどうすれば痩せるのか?

単純に摂取カロリーを減らすアプローチは続かない

特に体を動かしていない現代人が、過剰な体重を減らすにはどうすればいいか?前述のとおり、食事(摂取カロリー)を減らせば体重も減る。なので、単純に食事量を減らす戦略は確実に効果がある。しかし続けるのはとても難しい。

食事制限により一時的には体重が落ちるが、摂取カロリーが減るので筋肉が落ち、代謝も落ちて、どんどん痩せにくくなっていく。筋肉量の低下によって活発に動けない体になり、消費カロリーはさらに下がり、加えて生活の質が落ちる。脳は常に空腹感を発信しつづけ、常にこれに耐え続けるのはメンタル的にとても難しい。食料が不足していると判断した体は飢餓モードに入り、少ない食料から最大限のカロリーを吸収しようとするため、食事を減らしているはずなのに体重は一定以下に落ちなくなり、さらに食事量を戻したときに体重が増えやすくなる。最終的にはリバウンドして、元以上に体重が戻る恐れがある。短く言うと「体重は減るが、めっちゃツラい上に不健康になる」。これは持続可能な良い戦略とは言えない。

炭水化物ダイエットも同じこと

炭水化物ダイエットやパレオダイエット(旧石器時代の食生活を真似る)などの手法は、一見説得力がありそうだが、やはりカロリー摂取の原則からは逃れられない。つまり、何を食べようとも、摂取カロリーを消費カロリー以下に抑えられれば体重は減るし、そうでなければ減らない。炭水化物でなければ何をどれだけ食べてもOK、などということはない。炭水化物抜きやパレオダイエットで長期的な体重減少に成功したという人を調査すると、本人は食事量を変えていないと思っているが、実際のカロリー摂取量はダイエット開始前より減少しているという結果が出た。これは、食事の成分比率を変えたことで食欲自体が抑制され、結果として食べる総量が減って痩せた、と見なせる。日本人的視点で言えば「おかずだけを大量に食べ続けるのは難しい」と表現できるだろう。従って構図としては「運動をせずに食事量を減らす」ことに近くなるので、リバウンドや筋力低下、メンタル的な活力減退のリスクがあるし、栄養素の不足にも気を配らねばならない。ヒトの体を動かすには炭水化物が必要であり、実際に炭水化物を主要な栄養源としてきたことが調査で分かっている。炭水化物を極端に避けて体重を減らしても、健康に痩せた状態でいることはできない。

減らした食事量を定着させるには運動が必要

つまるところ、安定して体重を減らすには、栄養バランスを保ちつつ摂取カロリーを減らすしかない。そして体重が減った状態を無理なく定着させるには、食欲を落ち着かせつつ筋肉量を維持する必要がある。この状態は、運動抜きにはキープできない。仮に続いたとしても、健康ではいられない。健康なままで自らの適正体重を保つには、体を動かすしかないのである。

運動が重要であり必須である理由

身体を動かしても動かさなくても、ヒトの体は一日の消費カロリーを一定に保とうとする。例えばあなたが毎日ランニングで500kcalを消費すれば、体はそのほかの肉体の代謝を抑制して500kcal消費を減らして帳尻を合わせようとする。従ってトータルのカロリー消費量は同じになる。だったら運動しなくても同じことでしょう?と言いたくなるが、全くそうではない。

運動でカロリーを消費すれば、それ以外の肉体の活動は(比較的優先度の低いほうから)抑制される。逆に、体を動かさないと、肉体は体内の諸々の代謝活動を活性化させ、所定量のカロリーを使い切ろうと頑張ることになる。この余ったカロリーを使い切ろうとする体内の「頑張り」によって、ホルモンの過剰分泌や、不必要な抗炎症作用(いわゆるアレルギー)、関節炎、動脈硬化などの循環器系疾患、といった健康に不都合とされる現象が発生する。いわゆる生活習慣病と言われる症状の多くがこれに当てはまる。年度末に予算が余っちゃったので不必要な工事を行って道路を掘り返す、的なイベントが体内で年中行われているようなものである。

習慣的に体を動かしてカロリーを消費していると、このような「過剰な」体内活動が抑えられて、生体のバランスが保たれる。運動すると気分がすっきりして体調や精神状態が良くなった気がする、というのは気のせいではなく、実際に体調が良くなっているのである。ヒトは体を動かすことが前提の生き物であり、動かないとバランスが崩れてしまうように出来ている。

さらに、運動により体の様々な機能が活性化され、ホルモン分泌量やストレスへの抵抗力などがバランスの取れた状態に近づく。この結果、脳のカロリー摂取量調整機能(=食欲の制御)がより良く働くようになり、我慢せずとも自然に食べ過ぎ状態が解消していく。長期的な運動習慣は過剰な食欲を抑えてくれるのである。

そして、運動することで筋肉量と筋力が保たれる。筋肉は代謝を上げて太りにくい体を作り、日常生活の質も上げてくれる。健康な生活を送るために筋肉は欠かせない(念のため言っておくとマッチョになる必要はない)。

極端に大量の運動をしたらどうなる?

人間の適応能力には生理的限界がある。体が調整できる幅を超えて大量のカロリーを消費すれば、生命維持のために脂肪や筋肉が分解されて体重は落ちる。例えば世界最大の自転車レースであるツールドフランスでは、選手は連日7,000kcal前後のカロリーを消費し、それを3週間続ける。どれだけ大量の食事を摂っても収支はプラスにならず、レース終盤に向けて選手の体重は落ちていく。生命を維持するための肉体の活動が切り詰められ、免疫力が低下して風邪をひきやすくなり、体温調整が困難になり、食欲や性欲が減退する、精神的な不調を抱える、といった影響が出始める。

これはいわゆる「オーバートレーニング症候群」と言われる状態で、運動によるカロリー消費が大きすぎる状態が長く続いて肉体の調整幅を超えることにより、身体に不調をきたすレベルまで体内の機能が抑制されていく。こうなると体はどんどん動かなくなり運動自体ができなくなる。復活するには運動のレベルを落として十分なカロリーと栄養素を補給せねばならない。

ここで「どれだけ大量の食事を摂っても収支はプラスにならず」と書いたが、人は無限に食事からカロリーを補給できるわけではなく、消化管(胃や腸)の能力によって体内に取り込める上限が決まってくる。様々な調査から、人間が取り込める(栄養源として吸収できる)カロリー量の上限は一日あたり4,500~5,000kcal(成人男性)と言われていて、これが実質的な人間の継続的活動の限界レベルとなる。

高強度な運動によって、これを超えるレベルのカロリー消費を何日も続けると、徐々に体内の脂肪や筋肉がエネルギー源として消費されていく。貯蓄を使い果たすとそれ以上は運動レベルを持続できなくなり、オーバートレーニング症候群状態となる。なので持久系アスリートにとっては「大量のカロリーを取り込める消化管の能力」が重要な能力の一つ。たくさん食べられるほど、より多くの練習を積んで強くなることができ、レースで優れた持久能力を発揮できるのだ。

余談だが、血管に直接糖分をブチ込むなどして食事以外のルートでカロリーを摂取すると、消化管による上限を回避できる。しかしこれはドーピングの一種として大半のスポーツで禁止されている。まあ当然ですよね。

ヒトという種の持続可能性

人間の活動をカロリーに換算すると、多くのことが見えてくる。本書で調査対象となったハッザ族は、1kcal分の行動で10kcalの食料を得ている。一方アメリカでは、人々は1kcalの食料を得るために8kcalのエネルギーを消費している。消費活動全てを含めると、一人当たりの一日の消費カロリーは210,000kcalに達し、これはアフリカゾウ一頭の一日の消費カロリーと同じである。この100年程度で、人間の食料事情は大きく改善されたように見えるが、実はその仕組みを稼働させるために驚くほど大量のエネルギーが日々消費されている。果たしてこれは、サステナブルと言えるだろうか?

まとめ:大事なこと

  • 体重を減らすには、継続的に運動をしつつ摂取カロリーを徐々に減らすべき
  • 短期間では変化は起きない。年単位で変えていくものである
  • 体重に関わらず、健康でいたければ、運動が必要である。人間は体を動かしてバランスが取れる生物としてデザインされている
  • 体重を減らそうとするのではなく、健康になることを目指そう
  • 肉や魚、野菜や果物、木の実などの、精製加工されていない食料品を賢く取り入れよう。これらは過剰な食欲を抑え、栄養バランスを取りながら無理なく摂取カロリーを抑える手助けをしてくれる


本書の要約はここまで。膨大な資料と研究結果をベースに、生物としてのヒトの「最適解」を提示しながら、最後は種としての持続可能性まで示唆する、非常に練り込まれた興味深い本でした。何度も読んで理解が深まっていくタイプの良書かと。福岡伸一さんの「動的平衡」にも通じるものがあるかも。

余談:個人的な経験

かつて週末だけロードバイクに乗っていた頃は、ライド当日と翌日には差し込むような空腹感があり、ライド後に行きつけの洋食屋に直行してチキン南蛮オーロラソースがけ定食に白米大盛りで嗚呼メシがうまい、みたいな展開をエンジョイしていた。この頃は体重は増えはしないが減りもしなかった。それからコロナがあって在宅勤務になって、時間ができて週5でZwiftする生活を続けていたところ、いつの間にか空腹感が落ち着いてきて、ご飯の大盛りを頼むことが減り、午後4時ごろの間食のお菓子もいつの間にか摂らなくなっていて、今では運動をしない会社の同僚と食べる量はあまり変わらなくなった。体重はコロナ前から3kg程度しか減っていないが体脂肪率がかなり下がり(12~13%程度?)、上半身は細く、腰から太腿にかけてはまあまあムキムキという自転車体形になった。しかし筋肉が重いせいか、シルエットが細くなった割には体重はきっちりBMI標準の範囲にある。これが今の生活におけるバランスポイントなのだろう。

 

では皆さん、よい運動習慣と健康を。

国内線でのロードバイク飛行機輪行体験メモ

先日の北海道ライドの帰路で、人生初の飛行機輪行なるものを体験してみたので、その簡単なメモを。画像付きの詳しいことは他のWebサイトを見てください。

今回の条件

いわゆる普通の薄い輪行袋です
  • 乗車便はJALの旭川 → 羽田
  • ワーストケースでバイクが壊れる可能性も想定し、往路は新幹線+在来線。帰路のみ飛行機輪行とした
  • 輪行袋は定番オーストリッチのL-100。いわゆる普通の縦型輪行バッグ。両輪を外してフレームを挟み、サドルとリアのエンド金具の2点で接地するパターン。エンド金具の横に飛び出す形になるリアディレイラーが最も衝撃を受けやすい弱点となる

輪行のステップ

  1. バイクを普通に輪行袋に収納する。ただしバッテリーを内蔵している電動ポンプとライト類は手荷物バッグのほうに移した
  2. バイクを背負って旭川空港でチェックインし、手荷物カウンターへ。サイズが大きくてX線スキャン装置を通せないので、輪行袋の口を開けて係員さんが目視で安全確認。ボトルケージにツールボトルを挿したままだったが、ツールボトルまで開けることは要求されなかった
  3. 確認が済んだら、スーツケースと同じように手荷物カウンターで空港職員さんにバイクを渡す。倒す場合にはこっちの面を上にしてください、と伝える。従価料金制度を使うとどんな違いがあるか聞いたところ、手渡しで引き渡してもらえる可能性が高い、道中の扱いは変わらない、とのこと。従価料金を支払えば必ず手渡しになるのか?との問いには、行先の空港次第なので必ずそうとは言えないとの答え。じゃあ普通でいいです。ということでそのままバイクを預けて飛行機に搭乗
  4. 無事羽田に着陸し、手荷物受取所でバイクを待つ。しばらくしてコンベアが回りだし、まずはプレミアムなクラスの皆さんの荷物が出てきて、その直後に普通にコンベアに横倒しで置かれて出てきた。結構シュールな光景である。若干焦りがあったらしく写真は撮りそびれた。まずバイクの向きと肩掛けベルトの位置を落ち着いて確認し、いったんコンベア上で起こしてからベルトを背負って回収した

バイクへのダメージは?

  • 本体はノーダメージ。かなり固く締めたはずなのだがエンド金具が輪行中に回ってしまい、リアのプーリーで直接接地する状態になっていてちょっと焦ったが、帰宅後にチェックしたところ幸い被害はなかった
  • 輪行バッグには3か所ほど小さな穴や切り傷ができた。リアディレーラーのシフトワイヤー先端部が袋の外にピヨーンと飛び出していたのと、横倒し状態で下になっていた側(つまり左側)のペダルの当たる位置が切れていた
  • 手渡しなら問題なかったのか?は分からない。何とも言えない

こんな感じの2~3cmくらいの破れが数か所にできた

所感

  • まあこんなもんですよね、という感じ。丁寧に扱ってくれているのだろうし、天地を確認して「上になる面はこっちです」という張り紙まで空港側でやってくれるし、これ以上を望むべきではないが、それでも袋が破れるとか途中でぶつける程度のダメージはあり得るという結果。そもそも壊れても泣くなよという契約で乗ってるので文句は言えない
  • より一層の安全を確保したい人は、飛行機輪行用の頑丈な輪行袋を採用するか、リアディレーラーやペダルを外して緩衝材を取り付けるなどのひと手間を加えるべし。もしまた飛行機輪行する機会があれば私もそうするだろう。特に往路ではしっかり対策するべき。壊れると旅が始められなくなるしね

 

そんな感じの初飛行機輪行でした。

 

特急サロベツ(キハ261系)で稚内から旭川までロードバイクを輪行したメモ

先日夢の北海道ライドに行きまして。オロロンラインから宗谷岬を目指したんですが、午後から結構な爆風に見舞われ、危険を感じたので稚内でストップして旭川まで特急サロベツで輪行ワープすることにしました。その時の輪行のメモです。

旭川駅に到着したJR北海道キハ261系 特急サロベツ

最初にまとめ

  • キハ261系での輪行は普通に可能だが、車掌さんに置き場所を相談するべし。社内を巡回してくるので待ってれば会える
  • 定番の「車両最後部座席の後部スペース」には置けなくはないが、テーブルのせいで若干狭く座席のリクライニングが制限される
  • デッキに置くこともできるが、人の行き来が多い中間車は避けて、先頭車か最後尾を使うのが望ましい。混雑具合と編成次第で判断するべし

今回の輪行の条件

使われる車両や編成数は季節によって変わる可能性があるので注意。私は以下の条件で乗車した

  • 列車:特急サロベツ2号の指定席。南稚内6:40発 旭川10:19着
  • 乗車時期:2024年6月末の日曜日
  • 車両:261系。通常の4両編成の旭川寄りに2両を増結した6両編成で、増設部分の先頭2両は自由席、後ろ4両は指定席という配置

切符の購入

まずは「えきねっと」でスマホから指定席特急券を購入する。私が乗る予定のサロベツ2号は出発が早いせいか指定席は8割方空いていたが、車両最後部で2列並びの空席がなかったので、ひとまず全体的に空席率が高い4号車(指定席車両の一番前方)の右側前方の席を確保した。

えきねっとでの購入が済んだら、稚内駅または南稚内駅に設置された券売機を使って紙の切符を発行しておく。IC乗車券は非対応なので必ず紙の切符を出力すること。私は念のため前日に発行したが、当日乗車前でも構わない。

この紫色基調の機械で紙の切符を出しておく

実際の輪行は

前日に駅で聞いてみる

まずは係員が常駐してる稚内駅へ

事前にネットで情報を探した限りでは、261系では「各車両最後部座席の背後スペース」が十分広くはないらしい。なので前日に稚内駅で駅員さんに「自転車輪行したいが車両のどこに置くべきか?」と聞いたところ

  • そのサイズの荷物を置くためのスペースは用意されていない
  • 運行状況や混雑具合に応じての判断になるので、車掌と相談してほしい

とのこと。乗っても構わないが置き場所は適宜対処してくれという話。南稚内駅でも同じ反応。ふむ。

当日の展開は

早朝の南稚内駅。白い花がいい

ということで乗ってみるしかないので、当日になり眠い目をこすりつつ南稚内でサロベツに乗車。車掌さんがどこにいるかも分からんので、一旦4号車先頭部分の通路にバイクを置いて手すりにヒモで括りつける。ここは通常編成だと運転席の後ろに当たる部分で立ち入り禁止のはずだが、この編成では前方に2両が増結されているので通路として開放されている。指定席と自由席のゾーンの境界線なのでおそらく人の行き来もあんまり多くないだろう。

4号車先頭部分に一旦配置。この先は左に折れて自由席の5号車に続く

列車はすぐに発車するので一旦着座して車掌さんが来るのを待ち、自転車を持ち込んでいるのだが置き場所はどこがいいか、一時的にこの先の通路に置いてあるが構わないか?と聞く。あー所定の置き場所はないんですー、通路は人の行き来の邪魔になるのでそれはちょっと.... とつぶやく車掌さんを連れていき実際にモノを見てもらい、うーんまあしょうがないですね、降車駅はどこですか、旭川ですね、じゃあここで。みたいな会話を交わして確認終了。あとは安心して宗谷本線の車窓を楽しみ、無事旭川に着きました。ちなみに特急サロベツは結構揺れるので、バイクは手すりに緩まぬようしっかり結びつけることを推奨。

車両最後部は使えないのか?

という流れで私は通路のL字部分に置くことができたが、261系における輪行定番の車両最後部座席後ろはどうなのか?ということで念のため見に行ってみたところ、こうであった。

このテーブルがちょっと干渉する。折り畳めないし

確かにこのマーブル調のミニテーブルがちょっとジャマではあるが、スペースはなくはない。私が使っている縦型輪行袋(オーストリッチL-100)なら普通に置ける。ただし全力で座席をリクライニングすると自転車に当たってしまうので(というか自転車があるせいでフルで背もたれを倒せなくなるので)、隣に誰も座らなければいいのだが、混雑してる場合は配慮が必要だろう。まあ倒した座席で圧迫された程度でロードバイクが破損する可能性は低いだろうから、あんまり過敏にならなくてもいいような気もするが。挟まれるとしても位置的にはフォークかハンドルなどの丈夫な場所だし。結論としては、「空席率が高ければ安心して置けそう」である。また、幅はきっちり座席2つ分しかないので、横型輪行袋だとハミ出る可能性が高い点には注意。

ちなみに車両最前部の座席はこんな感じである。こちらも隣に人がこなければ置けなくもないが、固定しづらいので目的地までずっと押さえている展開になりそうな。

4号車最前部の座席

また、中間車両のデッキ部分も似たような構造になっているので置けなくはなさそうだが、こちらにはトイレ等の設備があり、人の行き来も多いので、邪魔になるだろうし、ぶつかってバイクが破損なんて可能性もありそうでオススメできない。いずれにしても車掌さんに伺いを立てる必要があるだろう。

長距離列車なのでトイレ近辺の往来は多い

余談

このとき「トクだ値50」という半額キャンペーンが発動していて、特急券乗車券込みで稚内から旭川まで4,400円という低価格っぷりで驚いた。走行距離260kmオーバーの特急でこの価格は安すぎる。確かに空席率は高かったし、色々と仕掛けねばならない事情は分かるけども。

安いよ

 

という感じ。またいつの日か、風が強すぎない日にローハイトなホイールを履いて宗谷岬を目指したいです。

 

使用感メモ:トピーク バックローダー 6L (Topeak Backloader)

北陸3泊4日と北海道5泊6日の2回の泊りがけライド用に投入したサドルバッグ、トピーク バックローダー 6Lの使用感のメモを。詳しい仕様や綺麗な画像は別サイトにたくさん紹介されているので割愛。

いいところ

  • 質実剛健。必要十分で、余計なものがついてない。さすがトピーク
  • 特に付属の防水インナーバッグが秀逸。エアーバルブがついていて簡易な圧縮袋として機能するので、部屋着類の容積をギリギリまで小さくできる
  • 価格も妥当な感じ
  • セッティングがキマれば装着はとても安定している。ダンシングもOKだった。もちろんフィールは重くなるけど
  • 余ったストラップの端を収める小ポケット的な場所が用意されていて、走行中にストラップがパタパタしっぱなしになるのを防げる

惜しいところ

  • サドルレールへの装着が難しくコツがいる。バックルを左右に通すところで結構手間取る。何度かやれば慣れるが、それでも手早い着脱はちょっと厳しい。私は結局、宿に着いたら中身をエコバッグに全部移して部屋に持ち込み、サドルバッグ自体は自転車に装着しっぱなし、というスタイルに落ち着いた
    • でもこれが走行時の安定感につながっているので仕方ない気がする
    • バッグ着脱に関してだけ言うとオルトリーブの圧勝

この赤丸の部分をサドルレールの左右に通すのが難儀

旅の基本スタイル

  • ウェア一式は宿についたら毎晩洗濯して翌日以降も連続して着るスタイル (なのでサドルバッグには入れない)
  • すぐに取り出すものはジャージやパンツのポケットで持ち運び。スマホ、財布、タオル、チェーンロック、鍵束

サドルバッグに入れたもの一覧

  • 最低限の室内着
    • 薄いTシャツ、薄い長パンツ、ボクサーパンツ2枚、靴下1足
  • 保険の防寒ウェア
    • ジレ1枚、ウィンブレ1枚 (小さく畳めるやつ)
  • 洗面化粧品類
    • 歯磨きセット、ワセリン&塗り薬小分け、小さい爪切り、絆創膏
  • デバイス関係
    • USBアダプタ、充電ケーブル2本
  • 自転車メンテ用
    • 予備チューブ1本、ウェス1枚、ビニール袋3枚、輪行用括り紐
  • 輪行バッグ (バンジーコードで上部に固定)
  • 超小さく畳めるnano-bagのリュックサックとエコバッグ

装着イメージ

  • 私のシートポストは後ろに曲がっているので、このバッグの形状とのフィットが良くキレイに収まった感がある
  • 安定した装着のためには、サドルレールとの固定バックル部分のストラップをしっかりと締め上げるのがポイント(画像の赤丸部分)。バッグを下から手で支えてサドルに押し付けた状態で留め具を開放してストラップを引いて緩みを取って再度留め具を閉めて遊びをなくす。バッグ上部がほぼサドル後部と密着しているくらいがよろしいかと思われる
  • 輪行バッグ(オーストリッチL100)はサドルバッグ上部にバンジーコードで括りつけるスタイルにした。非常に安定しており、旅の間に一度も外れることはなかった、というかズレることすらなかった。オーストリッチの輪行袋側にもストラップがついているので、そのストラップをバンジーコードに通せば万が一緩んだ場合でも知らない間に落ちて紛失という展開が避けられるのもグッド。もちろんバンジーコード自体をきっちり締めるのを忘れずに

という感じ。とても良く考えられた製品だと思う。いい買い物をしました。