良く知られているとおり、インドアサイクリングではいくら漕いでも全身に風を受けられないので、ちょっと頑張り始めると大量に発熱して自分で驚くほど汗をかく。この熱を適切に逃がさないとパフォーマンスが落ちるし、最悪熱中症になる。日々本気でレースイベントに血道を上げるガチZwiftersの間では近頃「レースの勝敗は冷房環境で決まる」と言われているらしい。
そして体温調整と同時に解決しなければならないのが、汗を大量にかきすぎる問題。汗の破壊力はおそろしい。有機物が微妙に混じった塩水は、周囲のあらゆる環境を実に効率的に腐食させていく。誰でも自宅の床を腐らせたくはないだろう。ここでは筆者の5年くらいのZwift歴で学んだ、体温と汗のマネジメントのノウハウをメモしておく。
まずは原則
汗はできるだけ蒸発させるアプローチを取り、その上で垂れたとしても直接自転車や床に到達しないよう頑張る。大量に汗が垂れるのはそもそも放熱が追い付いていないことを示しているし、垂れてしまうと周辺環境へのダメージが大きい。雨模様な日やガチ踏みするときには汗垂れはやむを得ないが、当たり前と思わずできるだけ減らす。
対策のポイント
- 汗を蒸発させて体温を下げるには
- 大風量を全身に浴びる
- 室温を下げる
- 湿度を下げる
- (室温が高くても) 長袖のベースレイヤーを着る
- 垂れてしまった汗をガードするには
- ハンドルとフレーム前部にタオルをかける
- 自転車の下にもタオルを敷く
- やはり長袖のスポーツ用ベースレイヤーを着る
- ライド後はすぐに拭き掃除をする
まず最初に:温湿度計を置く
客観的な事実の可視化と現状把握は何よりも大事である。まずはZwift部屋に温湿度計を置く。どの程度の気温と湿度だと自分に合っているのかを知るために温湿度計はマスト。ひとくちにZwiftと言っても、乗り手の出力やペダリング効率などによって発熱量は全然違ってくる。自分の乗り方にマッチする快適ゾーンを数字で把握しよう。
送風:工業扇風機をメインに、サブで家庭用扇風機
大風量を身体全体に受けることが重要なので、メインは風量を稼げる工場扇が適している。オレンジ色の羽根のアレである。首振り機能は使わないのであってもなくてもいい。風量調整はあればベターだが、ライド中に調整することはないので、これもどっちでもいい。調整は本体のツマミでしかできないので、ライド中に毎度降りて扇風機を調整してライドに戻るというルーティーンは現実的ではない。パワーコントローラーと組み合わせると工場扇の遠隔操作と無段階変速が可能になり、使い勝手が1000%アップするので、当サイトではこの方式を強く推奨したい。
家庭用扇風機は風量が足りないのでメインとしては力不足だが、サブとして体の側面など別方向から補助させるのは有効。サーキュレーターは体のごく一部にしか風を当てられないので、風を浴びている感は出るが、あんまり効果的ではない。
なお、十分な風を身体に浴びせても、部屋の換気が悪いとあっという間に温度も湿度も上がってしまい放熱ができなくなる。十分な換気ができる場所を確保するか、難しい場合はエアコンを使って温度と湿度を下げられるようにする。いずれにしても1時間を超えるライドでは換気をしっかりしよう。
温度調整:冷房/暖房を積極的に使う
日本の夏のインドアサイクリングはエアコン必須。ためらわず冷房を使おう。多くのエアコンは外気取り込みはしないだろうから、定期的に換気をすること。
冬場は走っていれば温まってくるので暖房不要だが、とはいえ室温が5℃以下みたいにかなり低い場合は風が冷たすぎて扇風機を回せない場合がある。この場合は無理せず少々暖房を使って室温を少し上げたうえで扇風機をしっかり回す。特に、寒くて湿度が高いパターンだと、風が冷たくてツラいのに大量に発汗してビショ濡れ、という厳しい状況に陥るので、暖房して湿度も同時に下げるといい。冬用のウェアをしっかり着用した上で扇風機を回すのも有効である。
春秋は当然ながら対策不要でヒャッホーすればいいが、雨の日は湿度対策をする。
湿度調整:除湿器はもはやマストアイテム
汗を蒸発させて体温を下げるために、非常に重要なのが湿度マネジメント。湿度が高いといくら強い風を受けても汗の蒸発が追い付かず、結果として体温は上がり足元には汗溜まりができてしまう。できるだけ部屋の換気を良くして、ライド中の湿度が上がりづらい場所に自転車を置きたい。
夏場はエアコンの冷房または除湿機能が効果的。リモコンのボタン一発で部屋を冷やしつつ湿度も下げられるので話が早い。
冬場は(多くの機種で)エアコン除湿は効きが悪くなる。ここでは「デシカント式」の除湿器が有効。デシカント式は寒い室内でもしっかり湿度を下げてくれるし、同時に熱を発生させて若干ながら部屋を暖めるので、特に冷たい雨の日のような場合に戦力になる。ちなみに除湿器は雨天での洗濯物の部屋干しにも活躍するので、この路線でプレゼンすれば家人の許可も得やすい。
ちなみに私の場合、部屋の湿度が70%を超えてしまうと、いくら風を強めても蒸発が追い付かず汗垂れ確定である。エアコンと除湿器をうまく使って、できれば50%台をキープしたい。ちなみに湿度30%程度だと、室温が30℃オーバーでも工場扇全開だけで汗が見事に蒸発していき、ライドも結構快適に続けられる。湿度の影響は本当に大きいのである。
服装:スポーツウェアをしっかり着る
扇風機の風を受けて汗を効果的に蒸発させるため、季節や室温を問わず上半身には長袖の吸汗速乾インナーを着用しよう。当サイトでは定番のアンダーアーマーヒートギアコンプレッションを愛用している。頭にも同じ素材のキャップやヘッドバンドなどをかぶる。下半身は比較的汗の量が少ないので、レーパンはフルでもショートでもお好みで。
上半身裸で漕ぐと肌に直接風が当たるので体感的には涼しくなって解放感もあるが、汗の蒸発効率が下がる上に床への汗垂れが増えるので推奨しない。腕を伝わって汗がハンドルに到達してしまう問題もある。
冬場は風が冷たすぎて扇風機の風量を上げられない問題が発生するので、自分の体感に応じてベースレイヤーの上に薄手のジャージ等を重ね着しよう。扇風機を回しても耐えられる程度のウェアを着てスタートし、体が完全に温まったら適宜脱いで横に放り投げておけばよい。
汗垂れ対策:床と自転車本体への直接の汗の到達を防ぐ
我が家では、自転車本体はタオル2枚でガードしている。まずハンドタオルを横にしてハンドルを防御し、その上から大き目のスポーツタオルをクロスでかけてヘッドパーツ周辺部とステム、フレーム前部とフロントタイヤをガードする。ハンドルはタオル越しに握る。そして自転車の下にもスポーツタオルを敷く。コンディションが厳しい日には2枚重ねにする。
バイクをZwift専用に出来る場合は、バーテープは取り外してしまうのが良い。バーテープは汗を吸い、ライドのたびに濃縮されていき、水分と塩分でハンドルバーを腐食させてしまう。そのままにしておくといずれ折れる。バーテープ有りのバイクでZwiftをするときには、バーテープにいかに汗を吸わせないか、に注意するといい。
自転車の下に敷いたマットはライドのたびに拭き掃除をするのが理想。さらに定期的にめくって扇風機の風を当てて乾かそう。特に汗が大量に垂れた場合はライド後にすぐ乾かす。特に「水分を吸うタイプのマット」で手入れを怠ると、最悪床材がを腐食させて回復不可能なダメージを与えるので、よくよく注意したい。
まとめ
Zwiftで暑いのを我慢してもいいことは何もないので、しっかり対策しよう。ライドのたびに巨大な汗だまりができたり、サドルの側にも汗が垂れたり、ソックスやシューズまでビショ濡れになる場合は、明らかに放熱が不足している。当たり前だと思わずに空調側で対策しよう。では皆さん良いZwiftライフを。